シラスウナギの密売人たちを一網打尽

シラスウナギの密売人たちを一網打尽

何にもまして、シラスウナギの闇取引を維持しているのはアジアの需要なのである。



企画記事
この取り締まりには5ヶ月間の捜査、何十時間もの事情聴取、運搬手段の追跡、尾行、100名以上の憲兵と官僚が必要となり、行われた職務質問は13回に及んだ。これは4月半ばに大西洋に面するVendée, Loire-Atlantique, Ille-et-Vilaine et Morbihanの4県において始められたもので、それは今なお続く捜査の一環として、根底にある麻薬密売のどす黒い汚水の中であたかも一網打尽といった様相を示している。実際にはそれは、ある保護種の国際的密売を解体することを狙うもので、それはシラスウナギ、つまりウナギの稚魚で絶滅の危機にある回遊魚である。

この透き通った小魚の密漁および主にアジア市場に向けた転売は、2010年代の始めから増加しており、それはその保護を目的としてそのEU圏外への輸出を禁じる決定が2009年になされたからである。些細な違反者から筋金入りの隠蔽者たちまでが、年間数億ユーロと推定される収穫物を分け合っている。これらの密売ルートの多くは、フランスに根を張っている。

かつては豊富だったヨーロッパ・ウナギ(Anguilla anguilla)は、大量殺戮を受けた。フランスの生物学的多様性機関によれば、フランス水系に現存するサンプル量は、30年間で75%減少した。特に問題となるのは、ダムの建設、河川の運河化、水質汚染、漁業、密漁と寄生生物である。


「厄介者たち」
許可証を所持する530名のフランスの漁民は、割り当てられた漁獲量に従っている。2017ー2018年の漁期には、65トンのシラスウナギの水揚げを許可されており、それはヨーロッパで行われた合法な漁獲高全体の80%近い。

地球の反対側では、アジアにおけるヨーロッパ・ウナギのイトコ、ニッポン・ウナギが、同じような理由から眼を見張るほど減少した。ニッポンでは、先に終了した漁期は記録にかつてない最悪のものとなりそうである。アジアではこの料理が非常に高く評価されており、その需要は今でもとても高く、それゆえ闇取引が公的商取引に取って代わった。このために、ヨーロッパ・ウナギを現地で育て太らせるために、やはり違法なヨーロッパ・ウナギに矛先が向かうのである。

サルガッソー海沿岸で生まれ、数センチメートル足らずの時に稚魚の状態で大西洋を横断することが知られているこの種については、熱心な研究にも関わらずその実験室での繁殖には誰も成功していない。

この特別な動物には価値があり、その価格は、フランスでは2017年から18年の冬の間にはキロあたり19800円から72800円相当の間で推移した。これを活きたまま、この保護種の世界的な闇取引の中心地である香港に密封パックで長時間空輸するシラスウナギの密輸コストは、キロあたり13万2千円から52万9千円相当になる。これは質の良いキャビアと同等である。

シラスウナギ、それはコカインとほぼ同じくらい実入りがよく、面倒なことがありません」とフランスにおけるシラスウナギ漁の主要地域であるロアール地方の漁業委員会会長 José Jouneauは言い切る。「潜在的な闇取引の増加に、違反の鎮圧と追求が追いつきません。おそらく検察は、最初はこの現象の重要性を考慮することが困難だった。私たちはその張本人である組織、大規模な闇取引に直面しているのです」とこの分野の専門弁護士 Antoine Tugasは明示する。

大西洋の河口地域では、公認された漁師たちは密漁者の存在に慣れている。互いに小競り合いをして、石を投げたり、威嚇したり、脅したり、さらには「イヌをけしかけ」たりするのを見た人たちもいる。警察の手入れがあれば、機動隊とのカーチェイス、非常線での強制検問、発砲は珍しくない。2010年代の始めから、この密漁のための「シラスウナギ公判」が毎年ナントの小審裁判所で開かれている。

「しばしば登場するいくつかの名前があります」と検事代理 Antonin Rousseauは打ち明ける。「ロアール・アトランティック県の旅芸人の一族が、シラスウナギのこの闇取引を専門としていました。そのメンバーたちは、親子代々密漁しているのです。」正式に許可を受けた漁師たちが司法による妨害を受けている。「私たちの中には、残念ながら厄介者たちもいるのです」とJosé Jouneauはため息をつく。「漁師というのは、セイレーンの歌声になかなか抗えないこともあるのです。」

ここでいうセイレーンたちとは、シラスウナギをこっそり手に入れる仲買人である。彼らの中で、司法がその照準に合わせている数名の海産物仲介業社が筆頭に上がっている。フランスでは、この稚魚の売買には10名ほどの卸売商がその権利を受けている。規定された以上にやり過ぎるような人たちもいるようだ。

ル・モンド紙からの質問に、匿名にするとの名目で応じた海産物仲介業者は一社だけだった。その関係者は、「法に従って」働いていると断言し、「十分に閉じられた」地域について説明し、「沈黙の掟の形で」運営している。「闇のネットワークはますます増えています」と彼は説明する。あるシラスウナギ漁師は、「私は、一定の期間をおいていかがわしい複数の仲介業社からのコンタクトを受けています」と付け加える。「海産物仲介業者は、禁止される以前にアジアに輸出していました。彼らはその仲介者と彼らのノウハウを残したのです。」

これに伴い、ロワール・アトランティック県を拠点とする海産物仲介企業のある管理職が、2016年に起訴され、裁判所による監視下に置かれている。彼の公判は数ヶ月以内に確実に行われる。同様の2つの業者が4月半ばに行われた憲兵隊による取り締まりを受けた後、予防拘禁されている。この件に近い筋によれば、これらの措置はシラスウナギの密輸容疑に対するヨーロッパにおける第一段階に相当する。別の筋では、今でも続いている前記の訊問は、ヨーロッパでかつて公にされたことのないシラスウナギの違法取り引きの「最も重要な事項」にたどり着く可能性がある。


「ヨーロッパにおける象牙
2年前から、密売人は身動きが取れない状況に追い込まれている。欧州刑事警察機構(Europol)は、EUの6カ国の機関との協働で、連携して2017年に大規模な攻勢をかけた。まとめれば、逮捕者48名と、4トンの稚魚、複数の高級車、1億3200万円相当の現金および金塊といった多額の押収が行われた。

喚問された組織のうちの1社は、この密輸により5年間で371億円相当におよぶ収益を上げた。モロッコでは、2018年の始めに、10個のスーツケースに梱包された60kgのウナギの幼魚がカサブランカ空港で止められた。その数週間後、スペインとポルトガルにおいて4人の中国人、3人のスペイン人、3人のモロッコ人が逮捕された。この際に警察は、460キロのシラスウナギならびに「密輸に使われた可能性のある」364個のスーツケースを押収した。

Europolおよびヨーロッパにおけるこの分野の関係組織である NGO持続可能なウナギグループ(SEG)は、EUにおいて毎年8から100トンの間のシラスウナギが密漁されていると見積もっている。これらのデータを正確なものとすべく、調査が行われている。その結果は、この違法行為について総額2億6400万円から3974億円近くに相当する数字をもたらすであろう。

この文脈において、SEGの代表Anderew Kerrは、シラスウナギは「ヨーロッパの象牙」であると断言することを躊躇わない。2016年になるまで、ウナギ稚魚の密漁はフランスでは罰金刑を科されるのみであった。それ以後は、法は被疑者への拘禁を計画している。仲買人に関しては、7年以内の懲役と9935万円相当の罰金刑を科される可能性がある。
(Le Monde紙 2018年4月27日)