「誰か他の人じゃなきゃ、でも他に誰もいない」:マリーヌ・ル=ペンの国民連合に投票する諦めきった人たち

「誰か他の人じゃなきゃ、でも他に誰もいない」:マリーヌ・ル=ペンの国民連合に投票する諦めきった人たち

 

マリーヌ・ル=ペンは期待を裏切ったのだが、多くの有権者は再び彼女に信頼を寄せるのだ。やむを得ずに。国民連合の街、ヴィレル・コトレ(エーヌ)でのルポ。

5月2日、エーヌの空はどんよりと曇っている。手を伸ばせばきっと指に触れそうな乳白色のねずみ色。ヴィレル・コトレの小さなマルシェでは、正午にはきっと降り始めると言っていた予報が降り始めるのを見過ごさないよう、ときどき人々がせわしなく頭をあげる。2人口およそ1万1千人、市長が国民連合(前:国民前線)のこの街は、2017年に大統領選一次投票でマリーヌ・ル=ペンを首位にしている。エマヌエル・マクロンの得票数のダブルスコアでである。

 

他の地域と同様に、あの決選投票の討論会でルペンがしくじった際には、多くの者が椅子からコケた。「あの生放送は見たけど、5分で消したな」と薄く色が入った眼鏡で少し髪を伸ばしたフィリップ66歳はいう。結局彼女に投票しているけど、同じだよ。それで現在は?「彼女を除けばあの党には誰もいない。そしてさらに、全くもって彼女には嘲笑するような尊みがあって、自分は彼女が再出馬することで迷わない。それでその政策だよ、彼女の内にそれが生まれたのが分かる。」

 

「あの人、キツイのよ、気骨がある」と、赤ちゃんを腕に抱いたジュスタヌ32歳は、丸焼きチキンを売る軽トラの前でイケズに褒める。少し離れたところでは、50歳台で髪の短い小柄のコレットが2台のショッピングカートを押しながら「馬から落ちてもまた乗るのよ。自転車と同じ。」国民連合の党首の失敗のことか?「誰でも失敗するのよ、人間だもの。そこに理念がある限り」とこのベビーシッターは弁護する。国民連合に対して国民が持つべき枢要徳は、慈悲なのですかね。「つーか、ったって彼女しか知らないよ」とコレットと一緒にいたローランは答える。仕方がないからル=ペン。もしくは他に選びようがないのでル=ペン。

 

「彼女が去るしかない」

髪と同じスマーフ色をリップにものせたマリアンヌ68歳は、同じ言葉を繰り返す。「討論会のとき、あの人はイカれてたわ。私には彼女が権力を掌握するとは思えなかった。誰か他の人じゃなきゃ、でも他に誰も知らないのよ。あの人の姪なのか、どうすればいいのか分からないわよ」と言い放つ。マリオン=マレシャルは、自分の名前から有名で厄介なル=ペンの部分を除去する選択をしていて、この名ではごく稀に人々の口にのぼるのみである。そしてひとは先手を打つ。「誰かは分かっているけど、これまでほどではない」とローランは私たちに言う。「彼女のことはよく分からない」とジェラール75歳はためらいがちで、彼も国民連合の投票者である。

 

30代でがっしりしたシルヴァンはさらに執念深い。「他の政党はどれも刷新したんだし、彼女は姪に立場を譲らなきゃダメだ」とこの若い男性は言い始める。国民連合の党首にしっかりとまとわりついている、彼のいう「密告された」「議員助手事件」(編集註:EU議会にあるとみなされている架空雇用)にもふれながら。「国民連合が選挙で何かをしたいなら、彼女が去るのかな」とクドクドと彼はいう、マリオン=マレシャルは決して伯母に対してクーデターを企てないだろうからと。それから、「マリーヌ」のイメージはその父親のイメージと結びつき過ぎていたのだ。自分の政党を掌握しておこうときっぱり決意した本人が、一掃してしまいたい慎重さと同じ程度に。

(Le Parisien紙サイト 2019年5月3日)