中国に直面したヨーロッパ、やっと卒がない対応

中国に直面したヨーロッパ、やっと卒がない対応

 

29日にシー・ジンピン国家主席は、EUの主権を確かめようとする 首脳たちと会談することになる

 

 

2018年1月、エマニュエル・マクロンは中国公式訪問の最中だった。その時彼は、ホスト国である中国とヨーロッパとの関係における「新たな基本原則(grammaire)」を定義する必要性について言及した。貿易と投資における「互恵性(réciprocité)」というキーワードを発しつつ、ジャック・シラクがその任期中に重んじた形での叙情性も受け継いだ。この時このフランス大統領は「共有された知性」への賛辞のなかで、「中国で言われているように、翠玉を手に入れるためには瓦から磨くよう、あなた方に提案すべく私は来ました」と言っている。その2年半後、もはやこの詩情にふさわしい場所はない。

 

新型コロナの危機のせいで、中米の対立がいまだかつてなく大きくなった。EUは、貿易一辺倒の論理と安穏な状況から離れるように圧力を受けている。これから欧州委員会であるフランスとドイツの政府は、地政学的な要望を共有していく。つまり、理解のないトランプのアメリカとますますその主張を強める中国との間で、EUはその戦略的な分野を守り、見開いた眼を差し向けなければならないのだ。

 

「プログラムの変更」

このヨーロッパに固有の路線は、6月22日に予定された第22回EU-中国サミットから垣間見られるであろう。テレビ会議となるが、欧州理事会の会長シャルル・ミシェル、欧州委員会会長ウルスラ・フォンデル・レイェン、中国国家主席シー・ジンピンとその首相リー・クーチアンが会することになる。この討論によって、まずは9月中旬にライプツィヒで予定されているEU国家元首と政府首脳団とシー・ジンピンとの間のスペシャルサミットを立案することになるだろう。しかしドイツは、6月初めに公衆衛生上の理由からキャンセルを発表した。実をいえば、この会合は望ましい進展をもたらしうるものではなかった。ヨーロッパの人々は、中国に関心を向ける以前に、政治的選択に自分たちの自覚を示したいのだ。

 

6月17日の欧州委員会の白書に提示された内容からは、国家からの手厚い助成を受けた、不当な競合そのものである海外企業からヨーロッパ市場を守ることを目指して、彼らがこれを始めていることが分かる。EUが考慮している罰金や取得物の凍結といった手段は、なによりもまず中国を対象としている。エマニュエル・マクロンの顧問で欧州主権を擁護するある人物は、「これは、ソフトウェア、アプローチ、あらゆる面でのモデルの変更です」と嬉しそうだった。

 

現実主義へのこの転換には、かなり議論となった欧州委員会のある計画が登場した 2019年3月の時点が重要となる。そこでは中国を、温暖化と多元主義の保護に関しては戦略的パートナー、経済的には競合者さらには「体制的な対抗者」であると定義している。それゆえに「素朴な時代(ère de naïveté)」だと結論づけている。「中国の中傷は金のかからない切り札だが、それは長期的な動向ではない。EUは独自の手段を探している。中国も、コロナのように教訓を学んで、EUを真剣に捉えなければならないことを理解している」と、ジュネーブの国際・開発研究大学院のランシン・シャン教授は考える。ライプツィヒのサミットにより、ヨーロッパの人々はシー・ジンピンに対してまさに統一戦線を形成しえなければならない。

 

ドイツはまた、ここ数年間に苦労して交渉してきた通商協定の締結を目指し、前進を明文化できれないかと考えている。アンゲラ・メルケルは中国との関係に多大な努力を傾けてきた。彼女はその15年間の任期中に、既に公式訪問として中国に12回赴いている。中国当局はこの質実で現実主義の交渉相手を尊重している。しかし、2016年の家電グループ美的集団によるロボット会社KUKAの買収は、ドイツにおいて国内もしくはヨーロッパの主力産業の重要性を再提起することとなった。

 

中国が新型コロナに関して情報戦を交えたやり方から分かったのだが、その野心はもはや経済の飛躍に止まってはいない。世界の工場で実験室であり、個人を超えた計画への市民の服従に賭けている西洋の対抗モデルであるこの大国は、もはや台頭するのではなく飲み込むのである。どうやって萎縮せずに自衛するのか。どのように生産的な方法で対話するのか。「中国もしくはアメリカの意図に対して自らを位置付けることが問題なのではありません。多元的な構図に関するヨーロッパの意図は明らかで、それは気候温暖化、医療、さらにG20の一環での債務猶予によるアフリカ経済への支援です。この3つのテーマに関しては、中国を抜きにしてはなかなか有効ではありません」との説明を大統領府は受けている。しかしまた、中国とともに歩むことも大変だろう。ヨーロッパがこれに抗うには、中国を支援するためにテクノロジーが大規模に譲渡されたこの20年ほどが終わって、まさにさまざまな一致を見いだすことによってパワーバランスを作り出し、不安となったヨーロッパの依存を切り崩すこと、といったようなことである。5Gの市場はその1つの試金石である。

 

「ヨーロッパ、特にフランスの企業は、中国に対して素朴さよりは横柄さを示していました。彼らにテクノロジーを移譲しても大したことではない、私たちには進歩の世代がある、彼らは我々に追いつかないだろう。3年前にも私たちはこう考えていました。例えば、電気技術でも、私たちは間抜けだったのです。私たちは、重要なのはソフトウェアとデータだけだと考えて彼らに好き放題させた。それで中国は全てのハードウェア、半導体を手中にしてしまった」と、経済知性への元省庁間代理補佐官マリー=ピエール・ヴァンエッケは考えている。

 

合衆国はイギリスの5G通信網のインフラと原子力発電所の建設をいつでも支援すると言っているものの、合衆国の面々は、マスクと薬剤の製造と同じように自分たちの脆弱さが白日のもとにさらされたととらえている。ごっそりと持っていかれたくなければ、彼らがあてにできるのは自分たちだけなのである。しかし、外交関係、つまり台湾や香港、アフリカへの影響力の駆け引きなどあらゆる局面を見ている人々もいるが、いまだに貿易にばかり注目している人々もいる。

 

中国はこれらの分断を認識している。中国は2017年にformat17+1を始めていて、これは中央ヨーロッパと東ヨーロッパおよびバルカンの大半の国々を結集し、うちEUの加盟国は12か国である。この構想は、「新シルクロード」プロジェクトの一環としてインフラの工事現場を増やすことになった。最近では、ブダペストベルグラードを結ぶ鉄道の直結にハンガリーが署名した最終合意の報道があったものの、しかし最終的にはこの構想の現状は思わしくない。「“シルクロード”は、資金面の問題や政治的な障害に直面して多くの中国人責任者たちが懐疑的となり、新型コロナウイルスを前に減速を始めてしまいました。今回の危機のため、大きな変更を余儀なくされています。債務協定に対する中国への圧力があります。このプロジェクトでは、インフラよりもデジタル面と医療面が優先されなければならないのに」と欧州理事会の国際関係の専門家であるアンドリュー・スモールは指摘する。

 

ポーランド国際情勢研究所の中国専門家Justyna Szczudlikによれば、17+1構想はヨーロッパやバルカンの小国が中国政府によってさらに認識されやすくなること、そしてその国家の関心を推進することを可能とする。しかし「中国の提案にはとても高くつく融資があり、EU加盟国にはヨーロッパの基金があるためそれほど魅力がありません。しかしながら、中国は逆説的な成功を収めており、それは認知されるという成功です。EU本部には政治的に成功したという概念、中国に対して依存が増大したという概念が定着しました。」

 

「軍事的な野心はない」

中国は、今回の公衆衛生上の危機のせいでコミュニケーションの方法を変え、自らの行動を擁護するだけではなく、ヨーロッパモデルの信憑性を損ねるために攻撃的な語調を取り入れた。EUはこれらのプロパガンダ作戦と闘うことを決意した。

 

またもや素朴さが形となって現れた。6月9日、中国の外交団長ワン・イとの3時間にわたる会談の後で、ジョセプ・ボレルが「体系的ライバル」という表現について尋ねられた。このEUの上位責任者はこう答えた、「(中国人民は)世界に現前しグローバルな役割を担う意思を再び示したが、彼らに軍事的な野心はなく、軍事力を使ったり軍事的な衝突に参加したりすることは望んでいない。」6月16日の中印国境での紛争は、このコメントが絶対的ではないことを示している。軍事産業分野での軍備競争がこれを認めていて、中国当局はその強力な手段として輸出と外貨準備高だけに頼るわけではない。

(Le Monde紙 2020年6月21-22日)