中国の解放に関する西側の幻想は終わった

中国の解放に関する西側の幻想は終わった

香港への国家安全法の採択は、アメリカの宥和政策を正当化するような期待の終焉を告げた。

 


西側諸国が中国を信頼することは間違っていたのだろうか。中国政府が香港に科した国家安全法が再び議論となっている。「中国的な特徴のある社会主義」と西洋の資本主義が交差する場所にあって、香港はこの2つの世界の関係の1つの最良の目安である。1997年7月1日にイギリスがこの領土を中国に返還したときには、西側陣営は楽観主義でなければならなかった。1980年代の初めに交渉が始まった際には、中国のヂャオ・ズーアン首相は「香港が民主的な手法で管理されるだろうことは明白だ」と考えていたのではなかったか。


ベルリンの壁の崩壊のみならず、天安門事件からも8年後のこの平和的な返還は、2つの制度には違いがあるものの、その2つの制度をつなぐものはそれらを分割するものよりも重要であるという証拠である。2001年12月の中国の世界貿易機関への加盟は、この政策のフェルマータとなるだろう。複数の西側国家は夢も見始めた。香港が中国社会の内部に民主的なウイルスを持ち込んだりするのではないか。


国家安全法は、この期待に終焉を告げた。中国の外務大臣ワン・イーによれば、アメリカ政府も中国も同様に「新たな冷戦」となっている。フランスにとっては1964年のド・ゴール将軍による共産主義中国の承認とともに始まった、しかし実際には1972年のリシャール・ニクソンの訪問が強く印象づけた政策を、西側諸国は断念しなければならない。「長期的に見て、国家の共同体から敢えて中国を永遠に外しておくことはできないというのは全く単純なことだ。(…)中国が変わらない限り、世界は安心できない。それゆえ私たちの目的は、私たちが情勢に影響しうる限り、中国にこういった変化をもたらすことでなければならないのだ」とアメリカ大統領は言っているが、彼は革新的な反共産主義者である。


「この半世紀にわたって中-米関係を規定してきた政策である「関与政策(engagement)」の萌芽となる世界観」だと、アメリカの中国問題の専門家オルヴィル・シェルは、オンライン誌The Wireの中国特集の試論でコメントしている。


西側諸国にとっては、このところずっと幻滅には事欠かなかった。オルヴィル・シェルは、

天安門事件の後、ジョージ・ブッシュ大統領が対話を再開すべく彼の国家安全保障の顧問ブレント・スカウクロフトを密かに北京に派遣した顛末を語る。私たちは今回の大量殺戮の首謀者デン・シャオピンが守勢に立つことを予想していたのだが、出てくるのは正反対なものである。この政党国家の最高指導者は「我々は、中国の内政に干渉することを何者にも決して許さない」と、アメリカの密使に浴びせかけ、「よくもあしくも」後悔した密使は、アメリカ人民はショックを受け「ブッシュ大統領はジレンマに陥っているのだ」と説明する。


1989年からホワイトハウスは、世界の安全保障と言うよりも、融和を正当化するような別の議論を使うだろう。つまり経済と貿易の自由化の影響によって全体主義体制の民主化が避けがたくなるのである。その先は私たちが知っている。オルヴィル・シェルの試論の表題である「関与政策の死」が、これをはっきりと示している。50年間の平和と繁栄をもたらしたこの政策はすでに死んでいる。「政治的な改革もなく、現存する世界の秩序に中国が同化している過渡的段階でもないのならば、アメリカにはもうこの関与政策(を続ける)論理はない。(…)シー・ジンピンは、こうした変化は単一政党政府を脅かしていると考えていて、これを殺した関与政策にはその中心に本質的な矛盾がある」とオルヴィル・シェルは結論づけている。


トランプ政府は、まさにさらに先を行っている。ドナルド・トランプの安全保障顧問ロベール・オブリアンは、「これ以上誤ることはできなかったのだ。この間違いは1930年以後の合衆国の外交政策の中で最も大きな失敗である」と宣言している。ホワイトハウスにとっては、「40年にわたる中国との、一方通行で不公平な関係を改めなければならず、この関係は私たちの国家の経済、そして最近では私たちの政治的安定に深刻な影響を与えているのだ」。


関与政策の戦略

上海のフダン大学の国際関係学教授シェン・イーは、Global Timesでシェル教授の語る「関与政策」、その要点としては中国の「平和的な進展」をもたらすということになろうか、それは複数の欠点を示しており、それはソビエト連邦や東側諸国にとっては「西側による非対称で不釣り合いな同化」そしてそれゆえ「自殺行為」も同然なものである。何よりも、1972年に始まったこの関与政策の戦略は「もはや現実に合っておらず、それはつまり中国とアメリカの間の勢力配分が変わってしまったからだ」。


西側諸国は中国への融和政策が中国が豊かになることを可能にしたと考えており、さらにトランプによればそれは西側諸国の損失によるものなのだが、逆に中国政府はそこに罠があると考えていて、共産党指導者たちは今までその罠に陥らなかったことを善しとしている。2008年の金融危機から12年がたち、彼らにとってはこの金融危機市場経済に内在する脆弱さをすでに示しているのだが、彼らにとってはCovid-19の流行に対する管理が、新たに中国のシステムの優越性を示すものである。


シー・ジンピンは数年前に西側モデルの衰退を理論付けており、中国の国家主義者たちは、さらにはドナルド・トランプが今日この衰退を加速していることを有り難く思っている。香港の掌握は、これからはパワーバランスが自分たちに有利だと中国が考えている証拠である。G7の外務大臣たちが6月17日に表明した「強い懸念」が、中国の意見を換えるなどという可能性は小さい。

(Le Monde紙 2020年7月1日)