中東では腰が引けてる日本

イスラム国」という組織を叩くために国際的な同盟が設立されているなかで、ヨーロッパや中東における出来事などまるで「対岸の火事」であるかのように、日本が積極的にならずに済ませていることは難しい。7月に安保法案を議会で強行採決したその7月から(⁇)、日本はいくつかの条件が整えば新たな国際的責任を引き受け、攻撃を受けた同盟国に集団的自衛権の枠内で支援を与えることができる。

パリで行われた国連の気候に関する首脳会議の合間に行われた11月30日のフランソワ・オランド大統領との会談の中で、日本国首相 アベ・シンゾウはフランスとの「連帯」を表明し、「国際的な共同体がテロリズムと闘うために協調した対策をとることの重要性」を強調した。

日本は、「イスラム国」と闘う中東の国々に対して、その心の支えとなるとか、経済的・人道的な支援を行う以上のことをする覚悟はあるのだろうか。外務省は、過激主義の台頭を食い止め封じ込めるための経済的支援(2015年に25億ドル)を行うことによって、日本は中東の安定にむけて財政的に貢献すると表明した。日本国政府はさらに、イラクとシリアからの難民受け入れを支援すべく、当該地域の国家(特にヨルダンとレバノン)への支援を三倍にした。 その反面で、日本は移民を制限する自国の政策に関しては全く変更しようとしていない。2014年に日本は、5000人の申請者に対して11名を認定している。日本の世論にとっては、ヨーロッパにおける混乱は、移民が多いこと、そして移民の統合が難しいことによるものである。


ダーイッシュの敵として
自分たちのよく知らない、自分たちが知られてもいない世界の一部(?)においては、日本の外交は長い間「所詮は銭儲け」路線であった。日本のエネルギー供給の大部分(90%)は中東から届いているのだが、原子力発電所の大部分が停止しているだけに、この供給は必要である。今日ではこの経済的な現実は、日本政府が慎重になることを余儀なくされている政治的な現実を伴うようになっている。1月にカイロにて行われた、「イスラム国」と闘う国々に対する日本の援助に関するアベ氏の声明は、日本が西側陣営にあることを再表明するために意図されたものだが、これによって2名の日本人の人質が処刑されてしまった。

ダーイシュの広報によれば、日本は彼らの敵として名を連ねているとのことだ。パリの襲撃は日本人を不安にさせている。報道機関・キョードーによる11月末の調査では、調査を受けたほぼ80%の人々が日本は襲撃の標的になりうると考えている。2016年5月末に伊勢志摩で行われるG7サミット、ついで2020年のオリンピックの開催に備えて、日本は対テロリズム情報収集部隊を作ることによって安全保障対策を強化している。襲撃のリスクを特定し、警戒人物リストを作成するには、明らさまに不備があるような法的枠組みの中では準備不足である。

安全保障問題の専門家たちは、日本が今すぐにジハジストの脅威を受けるとは考えていない。 イスラム教徒の少数派は8万人とさほど多くなく、そして穏健である。多数派は南アジアや東南アジア、そして少数派は中東から来ている。全くあまり知られていないが、イスラム教にはネガティブなニュアンスはない。さらに日本では、非常に厳しい法体系のため、銃器を入手することが極端に難しい。その代わりに、日本政府はサイバー攻撃の犠牲になっているのかもしれない、と国家公安委員長のコウノ・タロウはブルームバーグのインタヴューで言っている。


イスラム国」の仕掛ける罠
イスラム国が西側諸国に仕掛ける罠にはまらないためには、日本は感情的な反応から距離を置く必要があります。」と日本では稀なイスラム政治理念の専門家、東京大学のイケウチ・サトシは考える。「現実的な政策展望もないまま「イスラム国」を武力で攻撃していますが、それは道を間違っているのです。なぜなら、そんなことをすれば、世界各地で眠っている分子をテロ活動に訴えるよう駆り立ててしまうからです。」と彼は断言する。日本政府は、アメリカ政府に目を向けている。「日本は、アメリカの政策が「イスラム国」と対峙して硬化し、抑止から攻撃に移行することを懸念しています。結果的にそれは、アメリカへの後方支援の供出を強制され、さらにアジアから目をそらしたアメリカが、日本政府が本質的とみるリスク、中国がアメリカに代わってこの地域での覇権を得るという野心を無視するという、二重のリスクを伴います。」とこの研究者は続ける。

たとえ西側陣営に戦術的支援を提供したとしても、「日本には得るものよりも失うことの方が多いだろう」と、日本のある外交官OBは考える。「日本が貢献するとしても、武力行使の可能性に対しては相変わらず重い制約を加えられ、慎ましやかなものとなるでしょう。」と彼は付け加える。「その代償として、それは平和主義を掲げる国であるというこの地域における国家のイメージを損なうでしょう。」日本政府は、中東危機とそのヨーロッパでの波紋において、はたして消極的な姿勢を取り続けられるのか、もしくは重い腰を上げざるを得なくなるのであろうか。

日本が距離を置き続けているため、次のような声も聞かれる。「テロリズムを断罪してはいるものの、中東で爆撃されている民間人の生命は、それがいかなる国であっても暴力の犠牲となっている人たちと同じ価値を持っているのだと、日本は改めて明言しなければなりません。」と政治学者ヤマグチ・ジロウは記している。しかし、潜在的な日本への脅威を口実として、国家の強化と憲法の改訂が必要だとする人たちも右翼にはいる。世論が動揺すれば、どこぞの国と同様、自由に対して取り返しのつかない影響を与えかねないような変化を助長することになる。
(Le Monde紙 2015年12月15日)