このジャック・シラク政権の前首相にとって、マニュエル・ヴァルス、社会党、および野党によって流布された今回の戦意高揚のための演説は間違っている。
それは協調を乱す声である。しかし歓迎だ。15日にRTL/Le Figaro/LCIの番組Grand Juryに招かれ、ドミニク・ド・ヴィルパンは、13日夜の襲撃以来、マニュエル・ヴァルスや社会党および野党によってさかんに使われている表現である「戦争状態にある」という考えに、異を唱えた。むしろジャックシラク政権の前首相にとっては、「言葉が意義を持たなければならない時期に、今わたしたちはあるのです。」
「戦争とは、それは対決する二つの国家と二つの軍隊です」、パリとフランス・スタジアムにて行われたテロリズム事件、それはこれにはあたらないとドミニク・ド・ヴィルパンは論を進める:
「(テロリストたちが)カラシニコフ、手榴弾といくつかの弾薬を使用したという事実があるからといって、あくまである国家の枠組みの中において認識されるべき軍隊には相当しません。現在の場合には、狂信的グループや全体主義集団でしょう。」
戦争状態にあると考慮されることを拒絶するために、ドミニク・ド・ヴィルパンが進める議論として挙げるのもは、「敵」の本質だけではない。「私は、敵の思うツボとなることを望まないのです」、今回の考え方がもたらす結果について警戒すべく、彼は付け加える。彼によれば、「罠」なのである:
「このような考え方がもたらすものは、何でしょう。まず、テロリスト戦闘員の(*個人としての)責任を免除すること、彼らは「ぶちのめす、俺たちは軍の兵士だ」と言ってるわけですから。そして次は、彼らは戦争状態にあるので、彼らには戦争の対象があるわけで、だから彼らは私たちの領土と地位を征服しようとしているのだと法的に認めてしまうことです。」
それは、「ある狂信的殺人者の集団が、あなたたちに戦争を宣言しており、あなたたちがその戦争を、 エスカレートしていくような罠の中に突き落しているからではありません」と彼は論を進める。何よりも、この殺人者たちが「私たちを分断し、私たちの国を内戦に駆り立てようとしている」からです。
中東での西側諸国の関与から得られた教訓から学びましょう、と前外務大臣は呼びかける。彼は2003年のイラク戦争に反対している。
「今回の一連の襲撃は、その大部分が、アフガニスタン、イラク、リビアなどにおける介入で増大していた歴史的な過程と関連しており、これががっちり火に油を注いだのです。(…) 経験から学びましょう。現実はこの10年間で悪化しただけで、リビアでも、アフガニスタンでも、イラクでも、状況は以前よりひどくなっている。」
「総力戦といった場合、その意味とは何でしょうか。」ドミニク・ド・ヴィルパンは再び尋ねて警戒を呼びかける。:
「我々はテロリスト組織を破壊するためにとことんまで行こうとしています。これによって、さらにひどい汚染(contamination) をもたらすチャンスをテロ組織に与えることになるのですが、それは世論の一部を動かし、私たちに対して反感を持つ中東の一部の人々を動員するからです。」
この前外務大臣にとっては、「今度は我々が、彼の地において、我々の軍隊による戦闘を始めるのだ。というような、テロリズムとの「戦争」に対するアプローチは、良い結果を生むとは思えません。」
2014年9月に、ドミニク・ド・ヴィルパンは、国連総会でのフランソワ・オランドの演説に対して、すでに同じような発言をしている。Les Inrocksが発掘したCe soirの放送において(ou jamais! ?)、「我々の大部分のものたちが「イスラム国」を生んだのだということを自覚しなければなりません。私たちは、ある悪循環に陥ったままなのです。」と断言している。さらにつけ加えて、「反例なく、数十年来推し進められてきたこのタイプの戦争について現在私たちが知っていることの全ての結論は、特にアフガニスタン以後は全て失敗に終わっている。」
(Politis.fr 2015年11月15日)