日本では、「アサヒ」が転換点に立たされた

日本では、主要な新聞同士の競争が熾烈な様相を呈している。朝日新聞は日本で最も格式の高い日刊紙であり、自由主義的で中道左派とされるが、この夏から商売敵であり発行部数最多である讀賣(中道右派)と産経(右派) より一連の会心の攻撃を受けており、週刊誌・月刊誌までもが標的とされている。「現在まで、主要紙には競合的な共存関係があった」と、この業界のベテラン、ニシヤマ・タキチは考える。「こんなに熾烈に競争相手を告発することはなかった。」と、岩波の月刊誌「世界」に書いている。大臣たちに辞任を余儀なくさせたこの2週間のスキャンダルは、朝日への圧力を多少は和らげた。しかし、この攻撃の無慈悲さはやはり保護主義の台頭を示唆している。

購読契約者を獲得するための戦いが、執拗に朝日を標的として攻撃する要因の一つであるなら、争点は日刊紙朝日のレベルを越えて、言論の自由を含む民主主義的な価値観を問題にすることになりかねない。政治学者ヤマグチ・ジローは「日本風マカーシズム」の危険性をあげる。もちろん日本はまだそこまでではないが、朝日への攻撃はメディアによる自己検閲を助長しかねない。

エリートとインテリの新聞、朝日への攻撃は、大衆紙にとって美味しいネタ
確かに朝日は過ちを犯している。職業倫理に対する背徳は、以前からもいくつかみられてたものだ。1980年代に朝日が、日本兵ヨシダ・セイジの、朝鮮の女性を皇軍慰安婦(つまりは売春婦)として強制的に連行することに関与したと証言する記述に紙面を割いた記事などは、その一例である。朝日は十分に検証することなく、この人物の発言に競合他社より大きな紙面を割いた。ところが、この元日本兵は話を盛っていた。

慰安婦」は日本にとっては辛い問題で、ヨシダ事件は朝日にとって厳しいものとなった。本年夏の初め、産経がこのテーマについて新たに朝日を攻撃した。8月5日に、朝日はヨシダが嘘をついたことを確認し、記事を撤回し、読者に対して謝罪した。この謝罪にもかかわらず、状況は改善せずアンチ朝日キャンペーンを助長した。讀賣は、「韓国の日本への反発を助長」し、日本の対外的イメージを「損ねた」として朝日を非難した。

政治利用
週刊新潮(右翼)のような週刊誌やスキャンダル雑誌が尻馬に乗った。スクープとして提示された誤った解釈、3-11の津波による事故に続くフクシマ原発からの社員の避難に関する東電のヨシダ前所長の証言、任天堂社長の捏造インタビュー、朝日は新たな過失に対して謝罪をするが、もはや止まらない攻撃はさらに助長されていく。

エリートと知識層の新聞とされている朝日への「一斉砲撃」は、大衆紙にとっては美味しいネタであり、かつてこの問題を論じたジャーナリストに要請してこれを批判してもらったりしている。これにSNSが参加し、「慰安婦」について執筆した朝日の元記者を雇用したある大学は、彼を解雇しなければ危害を受けると脅迫されるようになった。

朝日が直面しているこの転換点は、日本のメディアの現状を示すものだ、と経済週刊誌トウキョウケイザイは推察する。自宅への配送システムで獲得した購読者にも関わらず、日刊紙は読者を失っている。日刊紙は、2010年1月から2014年にかけて、朝日新聞(発行部数760万)の場合9.6%、讀賣(920万部)の場合は7.6%減少している。

この自由主義の新聞は過ちを犯したのだが、これが政治利用されていることはやはり明らかだ。朝日が誤った記事を撤回することは、彼らが論じた題材までが霧散したということではない。元日本兵ヨシダは嘘を言ったが、性奴隷制度(esclavage sexuel)は、右翼の主張に反してやはり存在したのだ。

フクシマの災害の実情において朝日が取った立場と取材は、競合紙より強い(挑戦的な?)もので、それは共謀や放射能汚染の規模を暴露したが、それは政府にも、歴史修正主義の右翼にも、原子力ロビーにとっても面白いものではない。

国境なき記者団が確立した世界報道自由ランキングは、フクシマ災害の報道において「情報公開を遵守しない」として、日本を2013年に22位から53位に下げている。
(Le Monde紙 2014年11月4日)