イスラエル-パレスチナ: 行き詰まりの終焉

イスラエル-パレスチナ: 行き詰まりの終焉

 

ガザ地域の帯状地域で行われているハマステロリズム作戦とイスラエルによる反撃の残虐さは、イスラエル-パレスチナの衝突に対する政治的な解決策、および建設的な進展の促進のために諸外国が演じうる役割に再び疑問を呈している。

パレスチナ側からは植民地化された規模が大きく、しかしイスラエル側としてもイスラエルの存在を否定しその市民を排除しようという意図があることからも、多くの人が時代遅れになってしまったと言っているこの解決策を私たちは今でも信じることができるのだろうか。それは、最近の大量殺戮と人質の連れ去りによって、最も野蛮な様相を取ったばかりだ。2国民による国家を構想することは、いまだに可能なのだろうか、もしくはこの二つの主権国家がいつの日か調和のなかで生きていくことを可能とする連邦構造の原型を構想するなど、まだ全くそのような時期ではないのだろうか。「全ての人々のための一つの土地」といった統合に類似しているイスラエル人とパレスチナ人を統合しようとする市民運動によって、このような解決策ががますます頻回に提起されている。つまり、二つの国家制度、一つの国土、これはいくつかの画期的で詳細な提案を展開している。これらの海外ではたいていは無視されている議論は、慎重に継続されるべきである。

パレスチナの管理区域には約550万人の住民がいて、うち330万人はヨルダン川西岸区域、220万人がガザにいる。イスラエル側ではもう少し多く見積もられており、住民は900万、うちユダヤ系市民が700万、イスラエル国籍のアラブ人は200万としている。イスラエル-パレスチともに合計1400万人の住民、うちおよそ半数がユダヤ系、半数がムスリム、そして少数のキリスト教徒(およそ20万名)となる。これが、「全ての人々のための一つの土地」運動の出発点であり、ほぼ規模が同じ2つの共同体、そのいずれもが、イスラエル-パレスチナの地を自らのものとみなすことには歴史的、部族的、感情的な正当な論拠をもっており、それは軍事的な過去の傷跡によって残された不当かつ混乱した国境とは別に、自分たちの希望の夢の土地である。

政治的解決策

理想的には、文字どおりの二国民による総体的な国家を構想したいところである。それは、これら1400万人の住民をいつの日か再び取りまとめ、全ての人々に、出生や信仰や宗教上のしきたりから独立して、政治的、社会的、経済的に同じ権利を認める国家である。しかしそこに至るまでには、テロリストの下劣な戦略がこの可能性を駄目にしたりしないことを願いつつ、信頼の再構築には長い道のりが必要となる。

「全ての人々のための一つの土地」協定は、その第一段階としてヘブライ人国家および1994年に確立されたパレスチナ自治政府の後継であるパレスチナ国という、2つの国家の共存を提案する。パレスチナ国は、2012年から国連のオブザーバー国家の立場として認められており、最終的に西岸区域とガザに全面的かつ完全な主権を行使していた。新たな点としては、これらの2国家が、EUで採用されている規定に類似した、特にこの2カ国における移動・居住の自由を保障する連邦構造によって結びつけられるであろうということである。たとえば現在のイスラエル人の入植者たちは、パレスチナの法を遵守することを条件として西岸地域での居住を続けていくことが可能であり、これは略式の収用は終わらせなければならないということを意味している。同様にパレスチナ人も、現行の法規を遵守することを条件として、イスラエルで自由に就労し居住できる。そのいずれの場合においても、もう片方の国で居住することを選択した人物には、地方選挙における投票権などもある。

この提案の発案者たちは、それが困難であることを隠していないが、しかしその困難さをどのように乗り越えられるかも示している。特に、彼らはEUから着想を得たとも明言している。EUでは、フランス-ドイツ間の戦争と殺戮の1世紀を、人権と民主主義によって1945年以後終結させることが可能となった。彼らは同様に1995年に設立されたボスニア連邦の複雑な事例もあげている。「全ての人々のための一つの土地協定」でも、鍵となる社会・経済的な発展と領土内での格差縮小という役割が強調されている。ガザでは平均賃金が500ユーロを下回っているが、これに対してイスラエルでは3000ユーロを超えている。2カ国を統合する連邦的存在は、労働法、水資源の共有、教育と公衆衛生の公的インフラへの出資に関する共通の規定を設定しなければならないだろう。

むしろ今回は予期せず訪れたチャンスだったのだろうか。今やイスラエル右派は、パレスチナ人を分断しその信用を落とすべく、テロリスト組織を破壊すよう決定されているようだ。しかし、イスラエル右派はパレスチナの領界上の蓋を閉め、監視塔を閉鎖するだけでは済まされないのだ。イスラエル右派にとっても、対話の相手を見つけ出し、政治的なプロセスを再開しなければならないだろう。

諸外国、特にヨーロッパが果たすべき役割があるのはここであり、ヨーロッパはイスラエルの輸出の約35%を引き受けているのである(アメリカの30%に対して)。EUは貿易の力を利用して、泥沼化を弄ぶ体制よりは政治的解決策を志向する政府の方により望ましいルールを提供すると伝える時なのである。

事実上EUは、イスラエル右派が何をしていようが同様の貿易ルールをイスラエル右派に保障してきたことで、パレスチナの植民化を促進してしまった。国際法を侵害する行為に目をつぶって、短期的な貿易利益ばかり優先すれば、EUイスラエル左派を弱体化させてしまうことになる。活動的で革新的な左翼は、パレスチナと同様にイスラエルにも、とりわけ若者の中に存在しているのだ。南側諸国もそうだが、北側諸国の諸政府もますます国家主義的でしかも良識に反するようになりつつあるイスラエル右派と協定を結んでおり、そうした無関心さに直面してイスラエル左翼はすっかり何度も孤立してきた。今日こそ平和の陣営側に賭けて、争いの陣営側を不利な条件にすべきなのである。

Thomas Piketty

(Le Monde 紙 2023年10月16日)