未だかつてないビルマの人道的危機

未曾有(みぞうゆう)のビルマの人道的危機

国連によれば、約9万人のイスラム教徒がビルマ西部から暴力を避けてバングラデッシュに逃げ込んでいる。


ロヒンギャには、その悲劇的な長い歴史があるのだが、現在ビルマ西部で暗黙に行われている事態は、その記録をおそらく書き換えつつある。イスラム教徒のこの少数派は、バングラデッシュ国境にある地域で暮らしている。マチューテという大鉈や短刀、小銃で武装したロヒンギャによって、8月25日にビルマ警察の20あまりの派出所が襲撃されて以来、バングラデッシュとの間にある河を渡ってなんとか同国に逃亡する避難民が、かつてない割合で増加した。

バングラデッシュの国境警備隊が何名かの避難民を押しとどめようとしたとしても、多くの者は黙認し、バングラデッシュにある国連事務所が9月4日に発表した数字では、それでもこの数週間でロヒンギャの全人口のいわば10%あまりにあたる8万7千名のイスラム教徒が、1990年代の始めからバングラデッシュ南部にうねりをなすようにやって来ていた何十万人もの仲間に付け加わった。彼らのうち1万名以上は、2012年に仏教徒イスラム教徒との間で流血の紛争があって以来、すでにビルマ側のシットウェ近郊の難民キャンプでなんとか生きている。国連の情報では、別の約2万名の避難者が、ナフ川流域にある国境中間地域で移動できなくなっている。


焼失した家屋
ラカンロヒンギャ救世軍(ARSA)ーアラカンとは現在のラカイン州の過去の名前ーは、あまり知られていない組織だが、これへのビルマ治安維持軍による今回の弾圧は、しかしながら同様に一般市民も対象としており、これは2016年10月に武装した人々が最初にビルマの国境警備所を襲撃して9名の死者を出した際に起こったことが再現されたものと思われる。8月25日の攻撃のために、これは100名以上の死者を出すこととなり、うち1名が攻撃側の多数派であった。ミャンマー(ビルマの現在の国名)の軍司令部は、この攻撃からの数日間で「400名が殺害された」ことを明らかにした。ミン・アウグ・フライング将軍によれば、「370名のテロリストの死体が見つかり」、一方で15名の治安維持軍メンバーと14名の仏教徒市民が死亡していた。

人権擁護組織ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、2016年末と同様に、衛星写真ではイスラム教徒の村の何百もの家屋が軍と警察によって焼かれている。非イスラム教徒が少数派なこの地区では、ロヒンギャの戦士による襲撃によって、仏教徒ヒンズー教徒が自分たちも犠牲となっていたことを明らかにした。このマウングダウ地区に派遣されたAFPの特派員によれば、もっとも衝撃的なのは、ムロ民族の仏教徒の8名の村人がジャングルのそばに住んでいたが、8月の終わりにロヒンギャのゲリラによって殺害された。ビルマの軍人によれば、このロヒンギャ・ゲリラによって行われた襲撃は、約50以上あったと見込まれている。国連事務総長アントニーオ・グテーレが先週反応し、「ミャンマー治安維持軍によってラカイン州で行われている軍事行動が過激であるとする情報は、懸念すべきものである」とした。彼は「人道的な大災害」となることを避けるべく、ミャンマー治安維持軍に「もう止める」よう呼びかけた。国連世界食糧計画は、職員が暴力の対象となることを特に懸念し、これらの紛争地域での活動を保留した。これは以前、仏教徒が多数派であるアラカン州での国連と海外NGOによるロヒンギャへの支援を、彼らがやたらと嫌悪感を持って見ていたからである。

先週末にイエメンのアルカイダの指導者 カーレド・バターフィが、この地域のイスラム教徒たちに、「神の敵」に対して彼らの「兄弟ロヒンギャ」を支援するよう呼びかけてはいるが、ビルマで起こっている今回の悲劇が、さらに意図的に宗教的意味合いを帯びつつあることを示すものは今のところはない。パキスタンロヒンギャは、それ自身もサウジアラビアの同じ民族・宗教と関係しているが、たとえ彼らがロヒンギャ救世軍を遠隔操作していたとしても。

しかし、アジア・タイムスの記者がロヒンギャ・ゲリラの広報担当者に行ったインタヴューによれば、この少数派には人権が与えられておらず、今回の抗争はその人権を主張することが焦点となっていくであろう。つまりロヒンギャ、すなわちビルマ当局や大半の仏教徒がその起源から「ベンガル人」と呼ぶ、バングラディッシュ南部の言葉を話す人々は、ミャンマーの市民だと認められていないのだ。彼らは、子供を学校に行かせることも結婚式を挙げることもできない。彼らの大半が19世紀の終わりにやって来ている国家ミャンマーにおいて、彼らの大半はこのように存在しないものとみなされている。

アジア・タイムスのインタビューに際して「アブダラー」と名乗ったこのロヒンギャ救世軍の広報担当者は、「私たちはジハーディストではありません」と強調した。「私たちが作戦行動を行うやり方は、パキスタンや他のジハーディスト集団の意図とは全く関係がありません。私たちは、ビルマの他の少数民族グループと似たような武装グループなのです。」現在行われている弾圧を目の当たりにしながら、しかも中立の立場にある監視員、つまりロヒンギャ地区における最悪の事態を懸念させることができるものが全くいない状況で、このビルマイスラム教徒たちが、言い寄ってくるl'internationale du djihadにいつまでたぶらかされずにいられるのか、それが問題となる。
(Le Monde紙 2017年9月5日)