イングランドにおける懸念されるSARS-CoV-2変異株および調査中の変異株の専門的概要書

UK Health Security Agency

イングランドにおける懸念されるSARS-CoV-2変異株および調査中の変異株の専門的概要書: オミクロン株VOC-21NOV-01(B1.1.529)に対する入院リスクおよびワクチン効果に関する更新事項


要約

この報告は、オミクロン株のリスク評価に寄与する変異株サーベイランス解析の詳細を共有するために公表された。この専門家による専門的概要書には、拡大しつつある変異株に関する暫定的初期データと解析が含まれており、その知見には高いレベルで不確かな部分がある。

懸念される他の変異株や調査中の変異株に関しては、その全てのサーベイランス・データを網羅した別報が公表されている。

オミクロン株症例、入院率と死亡率

今回の報告における解析データは、2021年12月29日までのものである。この時点でオミクロン株VIC-21Nov-01 (B.1.1.529)(以下オミクロン株)感染と確認された症例は198,348例で、イングランドにおいて遺伝子配列検査もしくは遺伝子型検査を受けて同定されており、疑い症例は451,194例で、S-gene target failure (SGTF)によって同定されている。これはオミクロン株の感染者もしくは発症者の総数は反映していない(自治体でSGTFを検出しうるアッセイを使用して行われているPCR検査は約30%)。SGTFは12月29日にS-gene検査を受けた症例の93%をしめている。これが、比較分析を行うにあたってオミクロン株として分類されている症例数である。12月29日の時点で、イングランドにおいて検査(遺伝子配列、遺伝子型、SGTF)でオミクロン株と確定された計815名が、入院もしくは救急部から転送されている。

入院率とワクチン効果の検討

変異株とワクチン接種状況および入院リスクとの関連を分析する検討が現在2件行われている。検討1はデータ数も多く、オミクロン株およそ50万件であり、それは自治体検査、入院初日、全ての年齢層での診断例の全例を含んでいるからである。検討2はデータ数は少ないが、それは自治体検査にて診断を受けてから入院となった有症候の症例に限局しているためであり、入院にあたってはコロナウイルス(COVID-19)は偶発的なものながら、入院時のルーチンスクリーニング検査でコロナウイルスが検出されたような症例がもつインパクトは、そこではいく分か減少している。年齢は18歳以上に限定されている。

オミクロン株ではデルタ株に比較して全体の入院リスクが減少しているというこれまでの知見は、検討1にて検証された。加えて、いずれの検討でもワクチン3回接種者は非接種者に比較して入院リスクが実質的に低いとされている。推定域は重複しているが。いずれの検討も比較的少数の入院症例をもとに行われており、今後も繰り返し検討していく必要があるだろう。入院リスクが減少していると推定されたり、入院に対するワクチンの有効性が保たれているとしても、オミクロン株の症例数が非常に多いことは、入院となる症例数が大量かもしれないことを意味している。

検討1: 入院リスク(UKHSA/MRC Biostatistics Unit, ケンブリッジ大学)

先週公表された検討を更新したところ、オミクロン株によって救急部を受診したり入院となるリスクは、デルタ株のおよそ1/2であると分かった(ハザード比0.53, 95%信頼区間0.5から0.57)。オミクロン株によって救急部から入院となるリスクは、デルタ株のそれの約1/3 (ハザード比0.33, 95%信頼区間0.3から0.37)であった。これらの分析は、検体採取日と居住地区によって階層化され、さらに年齢、性別、人種、地域の困窮度、海外旅行の有無、ワクチン接種状況によって補正された。また、現在の感染が既知の再感染かどうかによっても補正されているが、しかし再感染は実質的に充分な評価をなされないため、この補正は再感染の効果を完全には考慮していないかもしれない。

この分析では、ワクチンを2回および3回接種したオミクロン株症例では入院となるリスクが低く、ワクチン未接種のオミクロン株症例に比較して3回接種後の入院リスクは81%(77から85%)減少している。

検討2: 有症候化感染と入院に対するワクチン効果(UKHSA)

有症候化感染に対するワクチン効果は、デルタ株に比較してオミクロン株では低いままで、さらにその効果はワクチン3回接種後10週間までに減弱する。これは先週発表された知見を再確認することとなった。

そこで、有症候症例が入院データに関連づけて考慮された。自治体検査によってオミクロン株と同定された症例のうち、ワクチン3回接種後に有症候となった症例では、同様にワクチン接種を受けていないオミクロン株の個体群に比較するとその入院率が68%(42から82%)減少していると推定された(年齢、性別、過去の検査陽性歴、居住地域、人種、臨床的に極めて脆弱な状態、リスク群の状況と期間によって補正済み)。有症候化に対する予防効果も併せて、3回のワクチン接種を受けたオミクロン株での入院予防効果は88%(78から93%)ということになる。有症候化に対する有効性は減弱していくが、入院を予防する期間を評価しているデータが不十分ながらあり、これでは長期間持続するのではないかとされている。

リスクアセスメント

オミクロン株のリスクアセスメントは、次回は2022年1月7日に更新されるだろう。

(UK Health Security Agency: 2021年12月31日)