日米同盟の再強化のためのシンゾウ・アベのワシントン訪問

4月28日から30日に行われる日本国首相アベ・シンゾウのワシントン訪問は、その背景にじわじわと増大する中国の覇権を含む国際的な舞台で日本の軍事的役割を拡大すること特徴とする形で、日米同盟を再強化することを強調した。

イラクウクライナ、イランの件でそれどころではなくなったが、バラク・オバマ大統領が最初の任期の際に意図したアジア周辺地域におけるアメリカの外交的・戦略的な均衡回復は、日本の首相が交代し、その年内にアメリカ訪問を行うことで中国国家主席シー・ジンピンに先んじたことで再び確実なものとなった(?)。数ヶ月のうちに、アメリカ政府はこの東アジアの2大国の代表による訪問を受けた。同盟国日本と交易相手国中国は、良好な関係を維持することが面倒であるにも関わらず、この2カ国間の平衡点を見つけたいという意図がそこにはあった。

アベ氏は、 合衆国議会でスピーチをする最初の日本国首相となるだろう。これはその前日などよりはずっと象徴的な4月28日での栄誉であり、これは1952年にサンフランシスコ講和条約が発効した記念日で、これにより日本は、何十年にもわたってアメリカの管理を受ける(subalterne)同盟国という位置付けにて独立を回復した。この時代は終わった。中国に対峙する抑止力を強化することになる新たなアメリカの保障と交換に、日本は、その政府が「積極的平和主義」と言い張るものの枠内で、国際的な安全保障におけるさらなる関与を引き受けることを約束した。

異論のある統治
アベ氏が到着する数時間前に、2カ国の外相・防衛相はニューヨークにて、日米同盟の基盤の変化を特徴付ける新たな軍事ガイドラインを明らかにした。1960年に締結された安全保障条約の条項によれば、日本が攻撃された場合にアメリカはその防衛の義務を負い、日本には47000人の米軍兵士が配置される(うち3/4は沖縄に配置されている)。その配備は地域の情勢に応じて何度か見直され、最近では1997年にも見直されている。

この同盟は長い間日本の防衛のみに限局しており、それでもこの同盟はより安定していたのだが、アベ政権が2004年7月に決断した憲法解釈の変更は、当時首相の政党が与党であった議会で審議されることとなり、アメリカ軍の支援を目的とした日本の部隊の軍事介入を認めている。ますます重要となるこの役割は、アベ氏の歓迎するところであり、国家安全保障に関する問題となると公式には業務分担の概念を主張するオバマ政権からは、肯定的にみられている。

国民を安心させる目的から、日米同盟は、中国政府が統治権に異議を申し立てている尖閣諸島を含む日本が管轄する領土全体を保障すると明言している。両国は、「日本による尖閣諸島の管理」にも「日本による尖閣諸島の一方的な侵害」にも異論があることを再確認している。日本国を相手取った平和戦争が集結して70年となる記念の日にアベ氏の訪問が行われることを強調するアメリカ政府は、現在の日米の良好な関係の中にアジア地域の緊張を緩和する材料を見出せればと期待している。

アメリカ人も日本人も、日米安保条約の強化は「特定して中国を」対象とするものではなく、例えば北朝鮮が提起する問題のような協力すべきテーマが他にあることも確認しようとしている。日本の外務省が資金供与している国際関係専門家による最近の報告では、合衆国がこの地域から手を引いた場合には、20年後には中国がアジア太平洋地域を支配しているであろうと予測している。この仮説においては、韓国は中国と接近していくであろうし、日本は孤立していかねない。

日本国が戦争を手段とすることを禁じた憲法9条を改定したいアベ氏だが、今回の合衆国訪問の間に日本国の平和への誓いをあらためてはっきりと確認し、アジア近隣諸国、特に日本軍の暴虐の犠牲となった中国と韓国などからの不満となりがちな先の大戦を「後悔する」という表現を使用して、アメリカ人の満足を得ようと試みるであろう。

「新たな挑発」
1955年にバンダンで開催された第一回アジアアフリカ会議の60周年記念式典が4月22日ジャカルタで行われたが、そこではアベ氏は御自分が愛する歴史解釈の操作をしただけだった。すなわち、彼は「先の大戦」に対する日本の「深い反省」を表明し、1955年にバンダンで採択された「国際紛争は平和的手段により解決」の原則に対して、「いつでも、どのような状況でも、この原則に従う国家であり続けることを約束した」国家であることを再確認した。しかし、前任者たちとは異なり、謝罪の表明はしなかった。

中国や韓国の期待にはほとんど応えられない宣言であった。 同じ時期に、150名の国会議員が靖国神社、国家のために死んだ人たちのうち、処刑された7名を含む14名の戦犯も称揚している施設に参拝していれば、なおさらである。「私人としての参拝である」とすぐに官房長官は声明を出し、これは表現の自由であると主張した。2013年12月に自らも靖国神社に参拝している首相は、今回は真榊の奉納をしている。

今回の靖国参拝や真榊の奉納を、韓国政府は「日本政府は過去に対応することができない」と、そして中国政府は「新たな挑発」だと見ている。ジャカルタで、シー・ジンピンとシンゾー・アベが短い会談をしているが、日本政府はこれを二国間の関係を再び暖かい雰囲気にする重要な一歩であると発表しているが、中国政府ではそんなものとは思っていない。

多くの日本人が中国の覇権主義的な野心を不安に思っているが、しかしだからといって自国の防衛政策の変更には好意的ではなく、それは世界のあちこちで起こる紛争に日本を引きずり込みかねない。首相の歴史否定主義に賛同しないものもまだずっと多い。それを率直に表明しないため、アメリカも同様にこの歴史否定主義には苛立っており、これは合衆国と同盟している日本と韓国との関係に緊張を引き起こし 、アジア周辺地域における戦略上の均衡回復を図るアメリカの政策の足を引くこととなっている。
(Le Monde紙 2015年4月28日)