日本では、アベ氏が防衛に関する自分の法律を押し付けようとしている

数々の批判を無視して、日本国の首相 アベ・シンゾウ は、軍の海外における軍事行動を容認する安全保障法を、ごり押しして採択させることに決めた。7月16日、何千人もの抗議者が取り囲んで「アベ、辞めろ」もしくは「戦争に反対」と叫び、ものすごい数の警官が配備され監視された国会議事堂で、衆議院にて国家安全保障に関連する11の法案が採択された。

この法体系は、同盟国とりわけアメリカの支援を目的として(?)、海外における軍事行動の権限を自衛隊に容認することを規定している。その唯一の条件は「日本国の存続が脅かされた場合」。これは、2014年7月に閣議決定された、日本に集団的自衛権の行使を認めるための憲法9条の解釈変更を受けている。

その前日、この法案は騒然たる雰囲気の中で衆議院委員会にて承認された。野党は激怒し、衆議院での採択をボイコットした。アベ氏は、法案が「国民の十分な理解を得られていない」と認めながらも、現在の国会会期が終わる9月までにこれを成立させるべく、全てのことを行っている。現在は、この法案は参議院にて審議を受けることになっている。もしも60日間で採択されなかった場合には、この法案は、与党が議席の2/3以上をしめ、これを最終的に成立させるための要件を満たしている衆議院に戻る。

台頭しつつある中国

その時、アベ氏はその目的の一つを達成しているだろう。1947年の日本国憲法、とりわけ戦争放棄を明記した憲法9条の成立以来、自衛隊は職務を非常に限定されて制限されている。自衛隊の最初の海外介入は、国連平和維持活動の枠内として1992年に始まる。自衛隊の海外活動は、いずれも特別措置法作成の対象となっている。自衛隊は、戦闘地域には決して出動しない。

「日本周辺の安全保障をめぐる情勢は厳しくなっています。」採択後にアベ氏は、台頭しつつある中国に間接的にふれて、その正当性を説いた。「この法文は、日本人の生命を守り平和を維持するために必要不可欠なのです。」首相は、アジアにおいてより大きな軍事的役割を引き受けるよう勧めたアメリカの支援を期待してよい。アジアにおけるアメリカのもうひとつの同盟国であるが、旧植民国家日本に対する不信感が強い韓国も、熱くなりやすく、日本国政府に「平和と地域の安全保障に貢献する」よう激励した。「日本は平和主義の政策を放棄したのか?」採択後に中国外務省のスポークスマン フア・チュニンは疑問を抱くことになり、同時に日本国政府に「正しい平和的な発展の道を歩み続ける」よう呼びかけていた。

日本国内では、この新しい法案は憲法違反であるとの批判を受け、世論は九条に非常に好意的で、法案には反対派が主流である。国家行政の放送局・NHKによる7月12日の調査を信じるならば、この法案を支持する日本人はわずか18%であった。この調査によれば、法案に投票するよう首相が求めているうちに、彼の与党の支持率は再び41%まで低下し、つまりは不支持率43%よりも低いレベルに落ちてしまった。

曖昧な軍事介入の基準

全国各地で抗議行動が行われ、たくさんの人物が非難を表明している。ミヤザキ・ハヤオ監督は、平和憲法は「太陽の光が差し込むようなものだった」として、アベ・シンゾウを「憲法を改正して歴史に名を残そうとしている。それは愚劣だ。」と非難し攻撃した。

「戦争の放棄は、平和的な日本のイメージの一部となっています。」と、7月17日に発行された日刊紙 ジャパンタイムズの対談で、上智大学政治学専門家ナカノ・コウイチ教授と慶応大学のナンシー・スノウが書いている。「この平和的な国家のイメージが、例えば経済と文化の力が人道支援に対して、そして開発において大きな信頼を持っているように、日本を発展させてきたのです。」

不満分子は、アベ氏の国家主義的な信念にも同様に食いつく。この首相は、第二次大戦中の日本国皇軍の犯罪を否認することを目標とするある勢力に加入している。彼が加入している、国粋主義および歴史修正主義の組織である日本会議からの支援の恩恵を受け、すでに彼は1947年の憲法を批判し、これはアメリカから押し付けられたものと考えると言った。「この新しい法案は、アベ氏の危険なまでに歪曲された歴史観を反映しています」と東京大学のヒグチ・ヨウイチは考える。

「日本国の存続」に対する脅威を規定する判断基準も、曖昧なままだ。アベ氏は、これを明示することを拒否し、中東からの原油輸送の要所であるホルムズ海峡における自衛隊の機雷撤去への参加、などを例示するにとどめており、原油輸送の途絶は日本経済に損失を与えかねないと説明している。ジャパンタイムスからみれば、これは「武力行使のためのオプションの余地を十分に広げておくものです。」
(Le Monde紙 2015年7月17日)