アベ・シンゾウの歴史修正主義が海外からの批判を招いている

1945年8月15日の太平洋戦争収束70周年を記念する日が近づくにつれ、アベ政権による歴史認識に関する議論と、日本国憲法の平和条項の解釈を変更することによって日本の軍事行動の拡大を容認する一連の法規を議会に容認させようというアベ氏の野望が、次第に緊張した様相をみせている。6月4日の衆議院の委員会で、3名の憲法学者が、集団的自衛に日本を参加させることになる新たな措置は、違憲であると宣言した。

首相が歴史修正主義の立場をとることは、歴史の観点からは日本の防衛政策を時代に即応させることに有利に働かない。1910年から1945年の朝鮮併合時の不正徴用や1930年初頭にに始めた戦争に関する表現を、和らげたりもしくは否定することで、アベ・シンゾウは自国の軍国主義の過去が、他のアジア諸国に広まる前に清算しようとしている。前任者たちが行った謝罪の声明を遵守すると彼は表明しているが、皇軍の責任を認めたり、罪の意識を表明することにはしっかりと慎重になっている。

ほとんど歴史否定主義ともいえるこの歴史修正主義は、軍国主義の復活という、現在のところは根拠に欠けていることになる中国と韓国からの非難を助長して、日本の軍隊が海外でも軍事介入する権限を強化することに影をさしている。最初のうちは中国と韓国の隣人との論争を活発にしたのだが、それ以降は海外で激しい非難を招いた。

歴史の細分化 (?: compartimentage)
6月28日にボンで行われた世界遺産委員会において、日本と中国・韓国の間で、政治・歴史に関する意見が対立し、あやうく紛糾の引き金となりかけた。日本明治の産業革命を象徴する23カ所の遺跡群を世界遺産に登録したいという日本の要求が、そのうちの7カ所がとりわけ朝鮮人58,000名の強制労働の場であったとを強調する隣国の反対運動を引き起こした。結局日本政府は、その場所のそれぞれに、その場所に由来する苦役を思い起こさせる掲示を添えることにした。

歴史を書き換えることになる歴史の細分化(?)。日本の歴史家を支持して、という一通の公開書状の中で、約500名のアメリカとヨーロッパの歴史家・政治学者が、皇軍将兵のために売春するよう自由を拘束された20万人のアジア人女性(と何名かのヨーロッパ女性)を意味する婉曲表現である「慰安婦」制度の犠牲者を含む搾取の存在について認めるよう、日本政府に求めた。日本の右翼は、この売春行為は皇軍によって組織されたものではなく、慰安婦たちも自由を拘束されていなかったとみなしている。

これは、書簡を書いた人たちの意見とは異なる。「慰安婦のシステムは、その規模と、皇軍による運営と、日本によって植民地化された領域で、若く、立場が弱く、貧しい女性を搾取した点で特殊である。資料は、これらの女性を移送し、売春窟を作った皇軍の関与を明らかに示している。」と彼らは書いている。このような立場表明をすることによって、署名者たちは歴史修正主義の支持者によって「反日差別主義者」と呼ばれることになった。しかし、数千人の会員からなる日本の16の歴史学会は、同様の見方を表明し、政界とメディアに対して「慰安婦制度」の犠牲者を含む「性奴隷」の存在を認めるよう求めた。

進歩
「戦争における隠蔽された、非合法かつモラルを欠いた側面を明らかにしていくことは、我々歴史家の使命なのです。」とヤマダ・アキラは考えている。彼は先の大戦における最も暗黒なページ、細菌兵器のために設立された博物館のうちの一つを運営している。明治大学生田キャンパスにあるこの博物館は、中国ハルピンの不気味な731部隊に関連した1000人の研究者が、研究に従事していた登戸研究所を対象としている。731部隊は囚人たちによる人体実験に従事していた。

人口の1-2%と少数派ではあるが、富裕層の中で倫理的な影響力を持つ日本カトリック教会の保守派も同様に、「政府による方向付けを深刻に懸念している」と考える。

太平洋戦争終結70年を記念する司教団の声明では、「ヒューマニズムに対する犯罪を伴った日本国の植民地政策と侵略の記憶が、戦争の記憶とともに消えていく。」と言っている。

1945年以後の民主主義や経済復興、経済援助政策において、自ら賛美するに価する進歩を強調し、「中国や韓国政府の愛国主義的な罵倒」について批判しながらも、日本の歴史家を支持する声明の署名者たちは、アベ氏にいいようにされた歴史をもう一度解釈しなおすことが、その成功を賞賛することに対する歯止めになるのだと考えている。

過去の最も暗黒なページを、自虐史観で損なわれる国家の尊厳の名のもとで誤魔化すことに躍起となり、アベ氏は日本のイメージを台無しにする。ドイツは、自国の過去の非を認めることによって見直されたのである。どんなに解釈変更や歪曲を重ねても、賞賛されるのは68年間にわたって表明されてきた日本の平和主義であって、断罪すべき過去を粉飾して復権させることではなく、それは未来の名声を損ねることになる。
(2015年6月26日 Le Monde紙)