日本は再び景気後退期に戻った

日本国首相 アベ・シンゾウにとっては痛恨の一撃である。ニッポン経済は再び景気後退に入っている。11月16日に政府が暫定的に明らかにした資料によれば、この第3四半期はGDPが0.2%減少した。今回の減少は、第2四半期にも記録されていた後退に続くものであり、世界3位の経済国が実質的に景気後退期に入ったことを明らかにしている。

この国の難局を打開するために、日本政府はTPPの発効を大いにあてにしている。12カ国の太平洋周辺地域を統合して世界のGDPの40%に相当する広大な自由貿易圏が、10月5日にこの協定の対象となり、現在は各国の議会にて採択が行われる段階となっている。

11月15日にアンタルヤで行われたG20サミットにてTPPに関する疑問が触れられ、日本の首相 アベ・シンゾウと他国の首脳、特にバラク・オバマとの会見でも、無視できない部分を占めた。TPPは11月19日のAPECでも新たに検討課題にのせられた。


遅れを取り戻す
日本では、このパートナーシップはアベノミックスの最優先課題でもあり、経済再建プラン、通貨規制緩和構造改革からなるこの経済措置は、停滞した経済を再活性化し、15年間にわたるデフレからの脱却を予定していた。

TTPに関する協定は、実業界から歓迎された。「TTPは日本経済にとってプラスになるものとワシは確信しとる」、日本の経営者の主要な連合団体である経団連会長 サカキバラ・サダユキは、10月25日のフィナンシャル・タイムズ紙において断言している。「それはワシらの経済成長戦略の柱となり礎石となるだろう」、アベ氏のゴルフのお友達でもあるこの取り巻きはこのようにも語った。

政府にとってTTPは、アベ氏が10月始めに設定した目標、すなわち、GDP 600兆円を達成させるものでなければならないが、これに対して2015年3月末における年度末の名目GDPは491兆円であった。

日本は、特に中国や韓国、さらにはEUとの自由貿易協定の締結への道も開かねばならない。自らの活性化のみならず、日本は韓国に対する遅れも取り戻そうと考えている。貿易額の36%が自由貿易協定の枠内で行われている韓国に対して、日本では20%以下である。

同様にTPPは、いくつかの分野、特にGNPの1.2%を生み出している農業の改革を促進するはずである。


何が起ころうが署名する
しかしながら、多くの人たちがTTPのもたらすインパクト、特に安い農業製品の到来に対して危惧している。この脅威に対して、農林水産省は、TTPの煽りをくった農業経営者に、その収入の80%−90%を保証するような保険を作らざるを得なかった。

自動車業界ではTPPは待望されていたものである。「うちの業界では、今回の貿易自由化への前進は明らかにウィン・ウィンの関係ですわ。」と日本自動車工業会(日本の自動車製造業者の協会)は見積もっている。アメリカに輸出される日本車への関税は、現状では2.5%であり、これが25年後には撤廃される。TPP加盟国内において生産された部品で組み立てる生産モデルに対する特権的な関税系は、日本でも失望を招いた。含まれるべき部品の割合は55%に固定された。日本政府は30%を期待していて、それは日本のメーカーがTPP非加盟国、例えば中国や韓国、タイなどの国で部品を仕込んでいるからである。

農水省のある官僚は、10月に週刊誌シュウカン・アサヒにて、「日本サイドでは、何が起ころうがTPP協定に署名する準備はできてます。何といっても、まさにアベノミックスの失敗が明白になったれば、国民の注意をそらすことが重要ですわ」とほのめかしている。

実際にアベノミックスは、企業収益記録にも関わらず、長期にわたるインフレを再建することも、給与所得をはっきりとわかるほど増加させることでも、うまくはいかなかった。そしてサカキバラ氏自身も認めるように、構造改革である「第三の矢」のためにこれからとるべき措置のリストは、まだまだ長い。
(Le Monde紙 2015年11月16日)