にわかに提起された天皇の退位

7月13日の夜に宮内庁は、天皇には退位の意思はないと断言した。その日の少し前に、お役所の(?:publique)テレビ局NHKおよびキョードー通信社は、アキヒト天皇がこれから数年以内に退位するようだと伝えている。1989年に即位し82歳になる天皇は、政府方面からの情報によれば、日本国天皇の座には「職務・責務に伴う義務」を、きっちり果たせる者であることが必要なのです、と言ったのだという。

「それは全く正しくない」、当日13日の夜遅く、宮内庁次官 ヤマモト・シンイチロウは報道陣に対して断言した。情報通の人々によれば、それほどの爆弾情報であれば、さほど良質な情報源のないNHKやキョードーが与えることはできなかったのではないか(?)。5月の段階で、宮内庁天皇の業務を軽減すると発表している。

この退位が公認されるならば、それはアキヒトの直系の祖先である光格天皇(1771-1840)が譲位した1817年以来となる。帝位はアキヒトの息子であるナルヒト皇太子56歳のものとなる。彼はオクスフォード大学で学び、その妻のマサコ妃は以前は外交官であった。夫妻には14歳になる娘アイコがいる。


退位は法的に規定されていない
この問題は、いずれにせよすぐにメディアと政界をひっくるめて動かした。与党自由民主党国会対策委員長サトウ・ツトムは、「皇室典範の改正が必要になると思う」と慌てて表明した。

この法規定には、退位の場合は想定されていない。この法文の第4条には「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とされているだけである。

この修正の提案は、各政党でも支持されている。共産党だけが態度を保留しているが、書記局長のコイケ・アキラは、退位の報道が公式なものではなかったことをあげている。


簡素で身近なイメージ
現在の天皇は、日本皇室の系統における第125代にあたり、初めて平民であるショウダ・ミチコと結婚している。彼女は農産物加工業における大企業、日清製粉の社長の娘である。彼はまた、簡素かつ国民にとって身近な皇室のイメージを作りあげ、国民からも真に敬愛されていた。

高齢となり、彼は儀礼的な業務、特に来訪した外国指導者との公式な会食や地方自治体責任者との会見などを減らしていた。2009年にはすでに、天皇夫妻は地方都市の訪問にあたってのスピーチを断念している。

アキヒトは、この冬に風邪をひいている。2012年には心臓冠血管バイパス術を受けるはめになっており、それは肺炎の治療を受けた1年後だった。2003年には前立腺腫瘍の治療を受けている。


憲法改定のプロジェクト
今回の退位の情報は、7月10日の参議院選挙におけるアベ・シンゾー首相の陣営の圧倒的勝利から3日後に明らかになった。この勝利と同じ日にアベ氏は、経済的難局などそっちのけに、1947年の平和憲法の改定を提起している。

自民党が2012年に起草した新憲法案によれば、天皇の地位は変わりそうだ。単純な「国と国民統合の象徴」は、「国家元首」に戻るのであろう。

天皇には政治的権力がないとしても、彼は必ずしも常にアベ氏の選択に賛同しているわけではないように思われる。第二次大戦におけるその役割が今も議論となっているヒロヒト天皇の後継者である彼は、平和と、そして日本の軍国主義の犠牲となった国々、特に中国および朝鮮との和解を、いつも心に留めそれを表明していた。

2015年に彼は、戦争終結70周年にあたって、この大戦に対する「深い反省」の意を表明している。皇太子ナルヒトは、憲法への愛着と「平和の尊さを心に刻む」意志を、あらためて彼に伝えている。
(Le Monde紙 2016年7月14日)