トランプに対して、権力に対抗するために不可欠なこと

社説。ドナルド・トランプが内輪で反移民大統領令を起草したと判れば、ぞっとする。


ル・モンド社 社説。 ロナルド・レーガンが、二期にわたる大統領任期を終了するにあたって1988年に行ったスピーチの中で、彼は合衆国を自由主義社会の灯台になぞらえ、「丘の上で輝く街」という有名な類似を持ち出した。「この街の周りに壁がなければならないのなら」と彼は続けた、「この壁には門があるのです。そしてこの門は、この街に来たいと願うすべての人々に対して開かれているでしょう。」

ドナルド・トランプの取り巻きは、合衆国のこの新たな大統領を、共和党の栄光あるこの先人、ホワイトハウスに来た頃にはさんざんB級映画の役者とからかわれていた人物になぞらえるのがお好きで、実際には彼は支持率のためにそこを去っている。しかし、ドナルド・トランプロナルド・レーガンではない。ロナルド・レーガンには、合衆国、自由を信奉する者たちを受け入れる土地についての一つのヴィジョンがあり、トランプ氏が1月20日ホワイトハウスに越して来てから実施した政策とは全くもって逆である。

トランプ氏は、その選挙キャンペーンを通じて言ってきたことを厳密に実行する。つまり、自らの国の門を閉ざす。通商でも、外交でも、経済でも、そして今や人道的にも、この第45代合衆国大統領は、世界第1位の軍事国家を国境の内側へ撤収させるべく組織する。中東7カ国からの難民や在住者のアメリカ領国内への入国を禁止すべく27日に彼が署名した大統領令、それが今回、実際に生身の人間に適用されている。

トランプ氏に投票した人たちは、その大部分がこの大統領令に賛同しており、彼らにはそれは、テロリズムから彼らを守ることを目的とした措置として提示されている。複数の共和党の大物も、同様にこれを支持している。しかしアメリカ社会の大部分は、移民によって作られたはずの国家の本質と矛盾するとして、とても象徴的なこの措置に対して立ち上がった。たとえオバマ政権が、難民の受け入れで卓越していなかったとしても。


強力な行政権
何万人もの市民が空港に集まり、大都市ではデモが行われ、弁護士たちは関係した旅客たちに業務を提供し、裁判官たちはこの大統領令の一部の適用を保留とすべく介入し、メディアは大規模に反応し、多くの議員たちはその立場表明を行った。シリコンバレーのIT大企業のトップ、海外の優秀な人材の求人担当者が、この戦いに参加した。

大統領制が強い行政権を持つアメリカの民主主義は、優れた「チェックとバランス」という反権力の仕組みの上で機能している。今日では、それらが働き始め、そしてその役割をとことんまで演ずることに期待しなければならない。政府の主な関係責任者を遠ざけ、内輪で大統領令がこのように入念に作成されていることからわかることは、ホワイトハウスのスタッフ内で超国家主義の空論派 スティーブ・バノンに任された関与が増えつつあることと同様に、ぞっとする。

トランプ大統領には国際的に抗議しても意味がなく、抗議もどんどん増えていた。しかしアメリカの市民社会そのものが敏感になっている。開かれてあることに意味を認めるヨーロッパの首脳たちは、アメリカ内の対抗勢力がその職務を全うできるよう、毅然とした態度を取り続けることが必要である。それが、この危険な大統領を理性の道に連れ戻すための唯一の方法である。
(Le Monde紙 2017年1月30日)