アメリカ訪問中のアベ・シンゾーを、ゴルフとトークが安心させる

日本国首相は、中国の野望に対してアメリカの支援を取り付けた。


2015年6月16日に共和党指名へ立候補した際の声明において、ドナルド・トランプは日本に3回も触れ、アメリカとの経済関係を利用していると非難した。次いで選挙戦においても、日本が両国を結ぶ防衛協定を「タダ乗り」してる、とお約束のように繰り返したのは、この大金持ちが日本の貢献は不十分だと判断していたからである。

それでもトランプ氏は、2月10日に日本の首相 アベ・シンゾーをホワイトハウスに迎え、この非難のページをめくってしまった。彼が到着すると、お互いにハグし、握手の手を彼の方からずっと離さず、それは執務室に集まったカメラに永遠に残り、改めて明確に示された友好関係を演出するためには、大統領は半端ではなかった。

アベ氏は、2016年11月8日にトランプ氏が当選してから、トランプタワーの彼の居室で彼と会見した最初の現職首脳であった。今回は、このアメリカ大統領サイドからの新たな関心のしるしという恩恵を受けることになった。実際に、アベ氏とその夫人は、午後になるとマー・ア・ラゴ、フロリダにあるトランプ氏の豪華ゴルフクラブで週末を過ごすべく、大統領夫妻とともにエア・フォース・ワンに乗り込んだ。

「冬のホワイトハウス」と名を変えた、差し向かいにはうってつけのところでのこの二人の滞在期間中の計画には、ゴルフコンペが記載されている。10日の共同記者会見のなかで、いささか媚びへつらう人物(un rien flagorneur) である日本の首相は、自分のゴルフのレヴェルは、大統領のそれには足元にも及びませんと強調して謙遜し続けた。それ以前にも「卓越したビジネスマン」と賞賛している。「あなたには議員経験がないが、しかし大統領となるために1年以上も全力をあげてきた」として認めている。

日本の首相は、ワシントンに良いニュースももたらしている。その前日の中国のシー・ジンピン国家主席との電話会談の際に、トランプ氏によって「1つの中国」政策が再認された。アベ氏が新政権との関係を緊密にしたいと考えたのと同様に、この中国に対するアメリカの政策の基礎となるものが再び白紙に戻ることが意味する象徴的な負担を考慮するなら、中米関係が即座に危機的となりかねないことは、疑うまでもなく彼は望まない。

この日本の首相にできることは、大統領が10日に日米軍事同盟の適用範囲を再確認したことに満足するだけである。共同声明のなかで、この二人の首脳は、中国が領有を主張している尖閣諸島(中国名 釣魚群島)も、この協定には含まれることを再確認した。アベ氏とトランプ氏は、「この島々の日本による管理を白紙に戻そうとする一方的な活動のすべて」に反対する立場を表明した。


死角
この宣言の別の一節では、南シナ海における中国の海洋進出に言及しており、この地域に実効支配をもたらそうとして中国政府がいろいろと造り付けた小さな島々への当てこすりのなかで、前哨戦としてのすべての「軍事化」を非難している。具体的には沖縄の辺野古基地のプロジェクトを継続するという誓約によって実現されるこの「絆」には、しかしドナルド・トランプが日本に対する怨恨を再燃させる原因である、2カ国の経済関係の問題がその死角にある。

アベ氏は、日本の強力な代表団の援助を受け、アメリカにとってより有利な目録を提示することで、非難の先手を打った。彼はまた、合衆国で販売されている日本車の大部分は「アメリカの工場でアメリカ人従業員によって作られたものである」ことについて念を押した。この首相が言うには、日本の合衆国への投資は総額4110億ドルであり、80万人以上の雇用を生み出していた。アメリカのインフラ領域におけるトランプ氏の意図を熟知し、別の面ではアベ氏は日本の新幹線の技術をほめそやし、ホワイトハウスからトランプタワーを1時間で結べますよとも保証した。

記者会見で、TPP交渉から撤退するというアメリカの決断について質問を受けると、その反面でこの日本の首相は一切の判断を差し控えた。日本政府にとって、この構想は、中国という大国からの影響を抑えるための貴重な切り札だと考えられていた。トランプ氏がその代わりにしたいと思う二国間協定は、おそらく特効薬としては登場しないであろう。
(Le Monde紙 2017年2月11日)