不安定になったアベ・シンゾ

不安定になったアベ・シンゾ

この首相は影響力の乱用を疑われている


国家主義の私立学校の香具師(?: operateur)に便宜を図った「影響力の乱用事件」(trafic d'influence)であるモリトモ事件で、3月12日にニッポンの財務省が、14の文書を修正(modifié)していたことを認めて以来、国会議事堂の前には何百人もの日本人が集まり、首相 アベ・シンゾと副首相の財務大臣 アソ・タロの辞任を求めている。

首相の縁戚となるこの人物は、かなり危うい状況のようだが、その職を離れることを拒否した。「私の役目は、どうしてこういうことになったのかを突き止め、これが繰り返されることがないようにすることだ」と3月13日に彼は反論した。この状況は厳しく、5月19日、20日ブエノスアイレスで行われるG20財政責任者会議には、彼は参加しない可能性がある。

モリトモ事件は、「帝国の気風を再び主張する」教育を奨励しようとするこの集団が、新しい学校を建設するとの目的で国土庁の土地を取得するために、約85%の値引きの恩恵を受けていたということが2017年2月に明るみに出たことで騒動となった。モリトモの指導者カゴイケ・ヤスノリとその妻ジュンコは、首相の嫁アベ・アキエと親交がある。アベ夫人がこの取り引きを支援し、この学校の建設を促した言葉の引用が、財務省の修正される前のバージョンの文書で明らかとなる。3月2日に中道左派の日刊紙 アサイが流したこの情報が、財務省からの告白によって裏付けられた。アサイは、アベ夫人への言及と全く同様に、首相や超保守主義の組織ニッポン・カイギへの言及も文書から全て削除されていると暴露した。ニッポン・カイギには、アベ氏もカゴイケ氏も所属している。


説得力に乏しい論拠
そこから、この事件はひどい状況となる。1人の財務省の官僚が、警察の発表によると自殺し、この案件について2017年2月に国会で証言した国税局の長官 サガワ・ノブイサが、3月9日に辞任した。「ソンタク」だという言葉を口にする人々がおり、これはある上司の意図を予め想定した振る舞い方を意味するニッポンの言葉である。首相の気にいるように、アベ夫人の名前は削除されたのだと。しかしこの議論はほとんど何も納得させない。財務省に長いオグロ・カズマサは、Japan Timesで、これらの文書の修正は、かなり上層部からの圧力がなければ起こり得なかっただろうと考えている。この改竄(alteration)は重大な犯罪であり、「民主主義の基礎に対する露骨な攻撃」であるとアサイ新聞は告発する。

サガワ氏は、2017年の夏に政府から国税庁長官に任命されており、これは国会で「嘘をついてくれた」(menti)ご褒美(recompense)のようである。そして、カゴイケ夫妻は2017年7月から拘留され、外部との接触を断たれており、これは政治事件で多用される「司法の人質」(l'otage de la justice)と呼ばれるやり方の犠牲者である。

アベ氏は、今のところはアソ氏を政府にとどめておきたいと考えており、それは彼が去ってしまえば自分が攻撃の矢面に立つことになるからである。そしてアソ氏は、2008年から2009年にかけての首相経験があり、自民党で重要な派閥を率いている。ここでアベ氏は、さらに3年間の首相の座を保つべく、9月に自民党総裁に再選されることを狙っている。自民党のある人々は、この展望を危ぶんでいる。2017年2月に アベ・シンゾは、もしもモリトモ事件に彼の妻か自分が関与していることが判明したら自分は辞任しますよ、と確約している。
(Le Monde紙 2018年3月15日)