この首脳会談で忘れられた人権

この首脳会談で忘れられた人権

トランプは、1年前には自分が「暴力的だ」としていたこの体制を問題にすることをやめた



6月12日に共同文書に署名し、それとともにこの二人の男はいくつかの発言をした。北朝鮮の指導者キム・ジョンウンは、「私たちは、とても特別な関係をハッテンさせました」と自賛した。アメリカの大統領ドナルド・トランプは、非核化のプロセスが「非常に迅速に」始まると断言した。そこであるジャーナリストが、間髪を入れずある質問を問いかけた。「オットー・ワームビアについては話し合ったのですか。」

このアメリカ人学生は、2016年に新年ツアーで旅行者として北朝鮮に滞在した際、外国人訪問者たちが押し込められていたピョンヤンのホテルで、政治宣伝の横断幕を盗もうとした。この「敵対行為」に対して15年の強制労働を宣告され、彼は最終的に昏睡の状態で、2017年6月13日に祖国アメリカに移送された。その1週間後の19日、彼は死んだ。この時にドナルド・トランプは、キム・ジョンウンの「暴力的な体制」を告発することを躊躇しなかった。12日に、明らかにこの若者の名前が尋ねられていたのだが、全く一切の反応が起こらなかった。


「関心の窓が狭い」
国連の北朝鮮レポーターであるトマ・オジェア・キンタータは、国連人権理事会の委任を受けながらこの国の訪問を北朝鮮政府から許可されていなかったのだが、この会見に先立って彼は懲役囚たちの赦免をこの体制に要求し、それが「この国で専横的に逮捕された人々を考慮した具体的な行動」となっていた。

アメリカの現職大統領として、北朝鮮王朝で実権を持った一人と最初に握手することになりたいトランプ氏は、この件を無視したのだ。しかしながら国連にとってこの問題は、アメリカの安全保障における懸念により直接的に結びついている。「もしもキム・ジョンウンが、武力拡充にあれこれと財源をあてたのなら、その理由は一つです。国民が彼に逆らわないことを知っているからです。政府への恐怖がとても広まっているので、国家が何を望もうが彼にはそれができるのです」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア支部の副所長フィル・ロバートソンは言う。

アメリカの行政のトップに関心がないのであれば、基本的人権の擁護組織は、トランプ氏はシンガポールで一度写真を撮られればもう興味を失って、北朝鮮問題を外交官たちに預けてしまい、彼らは再び北朝鮮問題を、この国の特徴である個人的自由の欠如した状況から示されていた以前の優先度に戻すであろうと期待している。

「トランプ氏の関心の窓はとても狭く、朝鮮半島に平和をもたらしたと自慢しようなどという考えのような、表面的な勝利の確定を一度認められれば、あとは彼はこの問題をワーキンググループに任せてしまって、あまり関わらないでしょう」とロバートソン氏は考える。「問題は、人権問題の検討に努めている他のアメリカ政府の部門を納得させられるかどうかです。その答えは、できるであると、私は信じています。」

高官たちがドアをガシャンと閉めてしまうことをしっかり避けながら、北朝鮮と折衝することがもしも彼にできるなら、彼はこれらのテーマについて現実主義者だということになる。つまり、子供と女性たち、もしくはさらに障碍者の権利の問題に対して、ユニセフと国連ウィメンがこれまで以上になしうることについて。監禁用の収容所や言論の自由の欠如といった、この国が拷問ほどは政治的ではないと判断している問題について。

「時には何度か後退することもあるでしょう、しかし大抵の場合は北朝鮮が注意深いことが分かります。」北朝鮮についてロバートソン氏はこう語る。北朝鮮が国際労働機関に加盟することをしっかり求めていくことから始めるよう彼は提案しており、それは強制労働に訴えることを減らすことに役立つ可能性がある。「この指導政党は、朝鮮労働(者)党というのではないのか」とロバートソン氏は強調する。
(Le Monde紙 2018年6月13日)