新型コロナウイルス:その疫学を理解すること

新型コロナウイルス:その疫学を理解すること

 

 

合衆国にて12名の新型コロナウイルス(2019-nCoV)症例が確認され、不安と特にウイルス伝搬動態への関心が高まっているが、アメリカでの感染リスクはまだ低いのだが。


この流行を効果的に食い止めるためには、伝搬動態の正確な理解が不可欠である。これまでに検出されていなかったこのコロナウイルスに対して、私たちの直接的な理解は限られてはいるが進んできている。もちろん、そのアウトブレークの拡大が加速しており、最近の報告では中国では約7600名が感染していて、とてつもない懸念材料である。それに加えてこの新型コロナウイルスの無症候性感染のレポートもあって、一般的には無症状の症例は、ある流行の拡大には有意な要因ではないとはされているのだが。


中国において無症候性に拡大していく状況が起こり日常化しているとして、感染者死亡率は約2%と比較的低いことを考慮するならば、感染した人々の殆どが軽症症例だということになる。このシナリオは形を変えた恩寵でもあり、理論上はそれによって集団免疫の発達が加速していることになる。つまり、ある疾患に対して、ワクチン接種や感染から回復することで国民の大多数に免疫ができているということである。集団免疫が、ウイルスのコミュニティを超えたさらなる伝搬に対するバリアを作ることによって、中国における流行の重症度と持続期間を軽減したののではないか。それは伝搬の連鎖を断ち切りアウトブレークの進行を止めたり遅らせることができる。言葉を換えれば、ウイルスがアウトブレークを拡大させていくためには、感染しやすい宿主たちが必要なのである。


新型コロナウイルスの潜伏期間、病原性、ヒトーヒト間感染性や他にも伝染パラメーターなどに関する私たちの知識にはまだ欠落があるが、CDCは教育と意識向上活動、旅行者のスクリーニングや制限、さらには隔離措置による感染症の監視と対応システムを強化することにより、エヴィデンスベースドでかつ多角的なアプローチを行なっている。このアプローチは、他のコロナウイルスのアウトブレーク(SARSやMERS)からの情報に基づいている。


広く報じられたように、WHOはこのアウトブレークを国際的に危惧される公衆衛生の危機であると宣言し、合衆国政府は合衆国全土の公衆衛生の危機だと宣言し、他にもある措置のなかから強制的な隔離措置を行うとした。


しかしながら疫学的に妥当な展望からは、合衆国内での感染のリスクはまだゼロに等しく低い(remains low to zero)。特に、合衆国の12例のうち9例は合衆国外で感染しており、あとの3例は海外で感染してきた家族からウイルスをもらっている。旅行に関連した孤発例は他にもアメリカで出てくるかもしれないが、すでに示されているようにアメリカ全土にはCDCの感染症制御ガイドラインとともに、包括的で効果的ながっつりとした感染症の監視と対応システムが整っており、おそらく感染者は即座に同定され封じ込められるであろう。


さらには、1019-nCoVのワクチンを開発すべく活発かつ着実な研究が進んでおり、このプロセスは優先的に進められている。CDCや他の政府機関がアメリカを安全に維持するために最適に働いており、すべての人々はこの事実に安心すべきである。

(MedPage サイト 2020年2月14日)

 


(→つまり英国では、中国での感染動態を信じて、経済動態を回すために「集団免疫」を持ち出して、ワクチンではなく病原ウイルスで免疫をつけるべく、何もせずバンザイ突撃をしそうな論調だが、しかし中国では積極的な封じ込めを試みてあの結果である。同じ動態をとると信じて、集団免疫として国民の60-70%の感染を見込むならば、英国民で4000から6600万人、日本国民ならば7200万人から8400万人の感染が必要で、それは死亡率を2%としても英国民の80万人から130万人、日本国民では144万人から168万人が死亡する事態を甘受することになるはず。無為に中国の動態よりも酷い事態になれば、それ以上。)