SARS-CoV-2感染患者の上気道検体におけるウイルス含有量

コレスポンダンス

SARS-CoV-2感染患者の上気道検体におけるウイルス含有量


編集者殿:

2019新規コロナウイルス(SARS- CoV-2)の流行は、2019年12月に武漢にて最初に報告され、WHOによって国際的に懸念される公衆衛生の危機と宣言されましたが、相当な罹患率および死亡率と結びついた広域感染に進展するかもしれません。遺伝子的にはSARS-CoV-2は、2002年から2003年にかけて25カ国以上で8096例の確定患者を出した世界規模の広域感染であるSARS-CoVと関係があります。SARS-CoVの流行では、感染者の発見と隔離を含めた公衆衛生の介入によってその封じ込めに成功しました。SARS-CoVの伝播は主として罹病から数日後に起こり、罹病初期に気道に少量のウイルスが検出され、およそ発症10日後にウイルス含有量は最大となります。私たちは珠海の18名の患者(男性9名、女性9名:年齢中央値59歳;26歳から76歳)の上気道検体におけるSARS-CoV-2のウイルス含有量をモニターしました。うち4名は2つの家族内で発生した二次感染(うち1例は無症候)でした。この無症候の症例は、既知の症例との密接な接触者であり、このためにモニタリングを受けています。各患者から1回から9回の連続検体を採取し、鼻腔スワブ72検体(中鼻甲介および鼻咽腔から採取)と咽喉スワブ72検体を解析しました。採取には、全患者にてポリエステル製フロックスワブを使用しています。


2020年1月7日から1月26日までに、武漢から帰宅して発熱(37.3℃以上)した合計14名の患者がCovid-19(SARS-CoV-2による疾患)との診断を受けました。診断はSARS-CoV-2のNおよびOrf1b遺伝子を標的としたプライマーとプローブによるrtPCR法により行われ、このアッセイは中国疾病预防控制中心にて開発されたものです。検体は広東省疾病预防控制中心で検査されています。持ち込まれた14名の患者のうち13名にCTスキャンにて肺炎の所見がありました。発症前14日間に武漢海鮮市場に行ったものはいませんでした。患者E, Iと患者Pでは集中治療室収容が必要でしたが、これ以外は軽症から中等症でした。患者E, I, Pの密接な接触者から二次感染が確認されました。患者Eは武漢で働いており、1月17日に珠海にいる妻(患者L)、母親(患者D)と友人(患者Z)と会っています。患者Lは1月20日、患者Dは1月22日にそれぞれ症状が発現し、発症後まもなく彼らの鼻腔、咽頭にウイルスRNAが検出されました。患者Zは無症候とされましたが、その鼻腔スワブ咽頭スワブは、接触後7, 10, 11日で陽性でした。患者Zの2月6日に施行されたCTスキャンには特に所見がありません。患者IとPは武漢在住で、2人に症状が出現し始めた1月11日に珠海の娘(患者H)に会いに行きました。患者Hには1月17日から発熱が見られるようになり、発症後第1日目に鼻腔および咽頭スワブからウイルスDNAが検出されました。


私たちは17名の有症候患者からの鼻腔および咽頭スワブにおけるウイルス含有量を、何らかの症状を発現してからの日数と関連して解析しました。ウイルス含有量は発症後すぐに高くなり、咽頭よりは鼻腔で高い含有量にて検出されました。私たちの検討は、SARS-CoV-2に感染した患者のウイルス核酸の排出パターンはインフルエンザ患者のパターンに類似しており、SARS-CoV患者のパターンとは異なることを示唆しています。無症候例で検出されたウイルス含有量は、有症候患者のそれと同様であり、これは無症候者やほとんど症候のないものにも伝播能力があることを示唆しています。これらの所見は、伝播は感染の早い過程で起こりうるという報告と一致していて、患者を検出して隔離するには、SARS-CoVの制御で必要とされた戦略とは異なる戦略が必要かもしれないことが示唆されます。SARS-CoV-2ウイルス含有量と培養可能なウイルスとの関連が明らかにされなければなりません。ほとんど症候のない、もしくは無症候で、少なくとも5日間にわたって口腔・咽頭腔のウイルスRNAが低レベルの症例があることを確認したことは、ウイルス伝播動態を確定し我々のスクリーニング業務を報告するためにはさらに良いデータが必要であることを示しています。

中国広東省疾病预防控制中心 理学修士Lirong Zou ほか

(New England Journal of Medicine誌サイト  2020年2月19日  NEJMc2001737)