日本政府は、南京大虐殺の関連文書がユネスコ記憶遺産に登録されたことに対して不満を隠そうとしない。今回の登録の決定は、登録を提案された40ヶ国から発行された人間性に関する遺産となりうる文書の審査を担当する、ユネスコ国際諮問機関の会議において、2年間のプロセスを経て決定された。
「中立で公正であるべき国際的機関が、日本政府のたび重なる訴えにもかかわらず、この文書を世界記憶登録簿に加えたことは極めて遺憾である」と日本の外務省は公式発表にて応じた。「今回の登録請求は、中国政府からの一方的な申告にのみ基づいて行われたものであり、日本政府としてはこれらの文書は不完全であり、その信憑性にいくつかの問題点を持つものだと考えている」と公式声明は主張している。
政治目的での利用
南京大虐殺は、第二次大戦前から大戦中にかけて、日本軍がアジア大陸にて遂行した他の暴行行為と同様に、繰り返し日中間の緊張の対象となっている。当時中華民国の首都であった南京の攻略は、1937年12月に押し寄せた複数の日本軍正規部隊による殺人と強姦、略奪を引き起こした。中国政府は、6週間の日本軍の侵入によって30万人に及ぶ死者が出たと算定しているが、他国の多くの大学はこの数字は過大評価だとしている。
ユネスコによれば、この記憶遺産には、羊皮紙の古文書から音声記録にいたるすべての大陸の348に及ぶ文書や資料が現在登録されている。「記憶遺産プログラムは、遺産となるものや記録文書を、現在と未来の世代のために保存することを意図した事業の一環として、国際的な協力と相互理解の精神のなかで進められています」とユネスコ事務局長イリナ・ボコヴァは説明する。日本政府は「ユネスコの責任ある加盟国として、このプロジェクトが政治利用されないよう制度改革を求めていく」との外務省談話を再び出した。
(Le Monde紙 2015年10月10日)