SARS-CoV-2感染を阻害するヒト・モノクローナル抗体

SARS-CoV-2感染を阻害するヒト・モノクローナル抗体

 

要約

中国、武漢で出現した新型ヒト・コロナウイルスSARS-CoV-2は、世界的な呼吸器疾患(COVID-19)の流行をきたした。今のところこの疾患を治療するワクチンもしくは標的治療はない。我々はここで、細胞培養にてSARS-CoV-2(およびSARS-CoV)を中和するヒト単クローン抗体を報告する。この交差中和抗体は、これらのウイルスの共通エピトープを標的としており、COVID-19の予防や治療が可能となるかもしれない。

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結論として、これはSARS-CoV2を中和する(ヒト)単クローン抗体の最初の報告である。47D11抗体はSARS-CoVSARS-CoV-2に共通に受け継がれたスパイク蛋白の受容体結合ドメイン上にあるエピトープに結合しており、ウイルス受容体との結合を阻害してもそれに依存しないメカニズムによってこの2つのウイルスを交差中和する能力は、これによって説明しうる。この抗体は、抗原を検出する試験や、SARS-CoV-2を標的とする抗体を測定分析する方法の開発に有用であろう。中和抗体は、感染した宿主においてウイルス除去を支援して感染の経過を変化させ、未感染の宿主がウイルスに曝露されてもこれを保護する。このようにこの抗体は、単独もしくは併用することで、COVID-19、あるいはそれ以外にもサルベコ・ウイルス亜属(グループ2bコロナウイルス)に由来するウイルスによって将来出現するヒトの疾患でも、その予防もしくは治療を可能としうる。

(Nature Communications volume 11, Article number: 2251  2020年5月4日)