「モンサント・ペーパー」、ラウンドアップについての議論の根拠となるもの

モンサント・ペーパー」、ラウンドアップについての議論の根拠となるもの

除草剤グリフォサートに、発癌性はあるのかないのか。2017年春に訴訟の一環として得られた、モンサント社が出した数百の内部文書(書簡、ファックス、内部レポート、当局、科学誌の編集者、コンサルタントとの通信)が、アメリカ連邦裁判所によって公表された。


8月10日のカリフォルニア法廷によるこの企業の有罪判決では、これらの「モンサント・ペーパー」が決定的な役割を演じた。これらの文書は、この先駆的な製品に関して、ほとんどの規制機関を安心させている見解と、この企業が保有している知識との間にある深いギャップの存在を明らかにしたのである。


脆さの自覚
2015年にグリフォサートを「おそらく発癌性がある」に分類した国際がん研究機関を除けば、欧州食品安全機構、欧州化学機関もしくはアメリカ合衆国環境保護庁といったほとんどの規制機関が、この物質には発癌の危険性は認められないと実際に考えている。

しかし、「モンサント・ペーパー」は全く別の経緯を物語っている。そこで私たちは、この企業には、1980年代の始めからその製品の安全性に対して重大な疑惑があったことを知る。この会社が出資した1983年の調査は、グリフォサートを曝露したネズミに稀な腎腫瘍が成長していたことを示している。主にこの内部調査に基づいて、1985年からアメリカ合衆国環境保護庁は、当初はこのグリフォサートを「発癌性がありうる」というカテゴリーに分類している。

それでもモンサント社はひるむことなく、これらのデータを、同社が買収したある教授が再検討することを要求した。農化学者の責任者たちの間で交わされた1本のファックスには、その手順がずばりと記述されている。「マルヴァン・クシュネル博士が腎の複数の切片を再検討し、その評価内容を環境保護庁に提出するのだが、その意図はそこで観察された腫瘍はグリフォサートとは関係がないとしてこの機関を説得することにある。」この化学物質に対する環境保護庁の汚名は速やかに晴れた、とすることになるものである。

1990年代の終わりには、独立したいくつかの調査によって、グリフォサートには遺伝子毒性があり遺伝子変異を誘発する、つまりある細胞に遺伝子変異を導入することで癌を誘発しうるというプロセスが示唆される。モンサントは、買収した生物学者、ジェームズ・パリーに、このテーマに関するレポートを要求する。この科学者は「私の結論として、グリフォサートには、in vitroでの染色体異常誘発性がある」と考え、同社に新たな調査に取り掛かることを勧める。

モンサント・ペーパー」には同社の幹部たちの落胆ぶりが露呈されている。同社はパリー氏のレポートを機密とした。1999年9月に、ある幹部が同僚たちに「パリーは我々にとって必要な人物ではなく、これを実現すればこの人物にたくさんの時間と金と調査が必要となる」。「彼が示唆する調査を、我々は短絡的には行わないであろう」、彼はグリフォサートの遺伝子毒性に関して、それを明確とする以前からこう付け加える:「目下我々は非常に脆い。」内部ではこういった脆さが自覚されていたにも関わらず、ヨーロッパの規制機関は、現在この物質に遺伝子毒性があるとはみなしていない。

モンサント・ペーパー」は、ずっと以前から同社の毒性学者たちが、国際癌研究機関がこの先駆的製品に強い関心を示すのではないかと危惧していたことを示している。農化学の科学者が同僚たちに書いたこの2014年9月のメールが示しているように、「我々がずっと以前から危惧していたことが起こった。グリフォサートは、2015年3月に国際癌研究機関による評価を受けなければならない。」

この国連機関が答申を出す1ヶ月前の2015年2月23日には、モンサント社内の「準備プラン」が、同社の幹部たちが、発癌性については「ありうる」もしくは「おそらくある」という分類になると予測していることを示している。このプランでは、国際癌研究機関の判断が出たならば、グリフォサートを商品化するほかの農化学企業と共同でプレスリリースを出したり、「SNSでのメッセージの内容を作製し」、「グリフォサートには発癌性はない」と繰り返すブログやツイッターのメッセージを公開するもしくは「公開させる」ことで、「抗議の声を大々的に組織する」必要があると明確に記載されている。


鑑定を「脱亜鉛化する」
別の一連の文書では、責任をもってグリフォサートの安全性を再評価するアメリ環境保護庁の内部に、同社が支持者を得たことを示している。ある内部メッセージでは、同社のある幹部が、環境保護庁の専門技術職の責任者であるジェス・ローランドと、グリフォサートの再評価について電話で議論したことを語っている。ここでは、もしも彼が、グリフォサートに関してアメリカの別の連邦機関が出すと予想されていた鑑定を「脱亜鉛化(メッキを剥がす)」ことができるなら、彼は「メダルもの」だとほのめかしている。

2015年9月付の別のメールでは、モンサント社の他の幹部が、ローランド氏は「5-6ヶ月以内に退職して去るが、我々がグリフォサートの擁護を繰り広げていくにあたって、彼は我々にとって有用である可能性がある」とはっきり述べている。この人物は、ル・モンド紙からの働きかけには応答がないが、確かに今日では退職し、現在進行している訴訟手続の一環では身元が明かされていないものの、これらの企業のためのコンサルタントの役割を遂行している。

そのうえこれらの「モンサント・ペーパー」では、すでに発売され使用されているラウンドアップのようなグリフォサートを元に混合された製品については、発癌性に関する試験の対象とならなかったことを示している。規制による要求に従うかたちで、分離されたその有効構成成分だけが検討されたのだ。ここで、同社の科学者たちの証言によれば、問題を起こしたのはこれらの混合物なのである。

2001年2月に、同社専属の一人の毒物学者が記している。「もしも誰かが私に、ラウンドアップを調査したいと言いに来たなら、どう対応すればいいのかは分かっている、かなり不安だが。」グリフォサートに混合された物質に対して行われる調査は、大いに慎重に行われる。2002年3月、幹部の一人がこの件に関して説明している。「ヨーロッパの承認を危ういものとしかねないようなデータは作らないよう、我々は注意しなければならない。」

その数ヶ月後、モンサント社の科学者の一人が、連絡を取っていた同僚たちの一人にメールで説明している。「ラウンドアップ発癌性がないと書くことはできません。なぜなら私たちはそれを言うために必要となる試験を行っていないからです。」
(Le Monde紙 2018年8月13日)