ジャック・アタリ「マクロンが成功するかどうかはこの国の関心事だ」

La Fondation Positive Planetの会長であるジャック・アタリにとって、共和国大統領は、次の3つのテーマを中心としてその行動に意味を与え、これを深めなければならない。それはつまり、効率、公平、長期である。

フランス共和国大統領には何ができるのか。多くのことができる。現状における世界での彼の行動をとらえ直し、最初の漠然とした数ヶ月間から明晰な教訓を引き出しさえすれば。

この惑星の状況は明らかに多望であり、リベラルな秩序の擁護者たちには、現在のフランスの政府よりも存在感があり申し分のない論拠をもっている。世界には力強いある種の経済成長や目もくらむほどの技術の進歩があり、それは世界的規模での平均余命の延長、小児死亡率と極貧率の低下をもたらした。

そのかわり、ヨーロッパ連合に対しては同じようにいうことが出来ず、それは安楽の土地であり、比類のないもので、そして分断されている。その加盟諸国は、その力を結集するような緊急事態とはなっていない。その経済成長は脆弱であって、何も変わらなければ、戦後の二大列強である中国と合衆国の競争の最初の犠牲者となるであろう。

さらに、出現したこの世界には結局危険がいっぱいで、財政面では、2008年の経済危機よりもさらにより深刻なもののために、あらゆる兆しが集積している。経済的には、失業者はいまだに重要で、特にフランスではそうである。そして、ここで失業率が減少しているのは、少数の一族がいかがわしい富に血道をあげているために、わずかな賃金のために働くことを受け入れる以外になす術がないというだけなのである。

政策面では、民主主義陣営は、未来に対して準備するということを入念に考えることができない成り行き任せの政府、という破滅的なイメージを与えている。地政学的には、アジア、ヨーロッパ、中東、ラテンアメリカ、アフリカでは、たくさんの脅威が常にうろついている。イデオロギー的には、自由民主主義国家間の空隙のために、国民は、最も死亡率の高い麻薬にまで手を出すことで、極端かつさまざまな形態の現実逃避を求めることになっている。最後に、当然ながら地表、大気、海水におけるエコロジー的な惨状が、次第に近づきながら規模を増している。

危機にある民主主義
そのいずれに関しても、フランスはその難を免れてはいない。莫大な国債、重大な格差、環境破壊による搾取、改革できない国家機構、自らの特権にしがみつく支配階級。とりわけこの30年来、私たちの国家は、社会集団間の格差と官僚主義という、その最も重大な2つの弱点を悪化させている。

これについては私たちの民主主義は死んでしまうかもしれない。もしも速やかに有効かつ適切な改革が行われなければ、もしも何百万人もの移民による侵略などという妄想上の幻覚が広がるに任せるなら、次期のフランス共和国大統領となるのが極左に支持された極右の人物となることはほぼ明らかであろう。

それを避けるためには、現職の共和国大統領が成功してくれることが国家の関心事である。国民の人気の獲得に成功するのではなく、そんなものはしばしば何もしていないしるしであって、上記の問題のあらゆる脅威にうまく対処するということなのである。

このために彼は自らの行動に意味を与えなければならず、次の3つのテーマを巡って自らを深めなければならない。つまり、高い効率、社会的公正と長期的展望である。

高い効率とは、増殖し麻痺した国家および地方行政機構への支配力を取り戻すということになるだろう。これ以上因習的な予算を課せられてはならない。歴代の政府がうまく遠ざけてきたようなあらゆる狡猾かつ平凡な人たちを紛れ込ませる、官僚そのものが染み込んだ官僚たちによって、因習的な予算を課せられてはもはやならない。また彼は、国家と地方自治体の機能の本質的な改革を実現しなければならない。そして最後は、責任能力のない大臣たちが体制によって定められているあらゆる規定を破って辞任し、また分別のない協力者たちは共和国のあらゆる法に背いて逸脱しているが、こういう人選を避けることである。

社会的公平とは、現在成功する手段を持っている人々のためだけではなく、あらゆる人々のために統治するということになるだろう。そして同様に、たとえ数字では最も不利な人々のために(特に国家教育省によって)多くがなされたようになっていようと、この政府に対する私たちのイメージは、最富裕層、学識がある人々、コネがある人々、不満を訴える理由がない人々、到来した世界を理解し、何が起ころうとそれを最大限に利用できる人々のための政府そのものなのである。このイメージから脱却するには、最も貧しい人々に訴えかけるだけではだめであろう。彼らに対して、手を取り合う手段、これ以上不利な条件とならないための手段を保証しなければならない。個別住宅支援費の不条理な改革や、連帯富裕税の悪意ある抑制(これは、NGOや財団基金からその資金調達の主要な手段の１つを奪う)は、彼らの条件を不利にするものだったのだ。

長期的展望とは、未来の世代の利益となるように統治し、そしてそのために教育、保健、学術研究と投資とを、もっとずっと思い切って優先するということになるだろう。そして私たちの税制を一変させ、それが温室効果に対して企業と世帯によるガス(gaz)の放出を明らかに削減し、廃棄物の再利用とを明らかに誘発するようにすることである。

これはいずれも可能である。そしてこの国はうまくやることができる。フランスは素晴らしい国なのだ。肥沃な土地、夢のような風景、海には自由に出られる、数え切れないほどの領域での最先端の産業、教育を受けますますしっかりと成熟した、たいがいは利他的で助け合おうと覚悟している卓越した住民たち。

それをEUのプロジェクトに組み入れることで、この惑星で最も恵まれている5億人の人々に共に自衛し行動する手段を与えることができるなら、当然ながらその方がもっと良い。それは理想郷である。言い換えればプロジェクトであり、プログラムであり、予算なのだが、それは実際に行われて現実となり得るし、現実とならなければならない。
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ジャック・アタリはLa Fondation Positive Planetの会長。今年、『Les Chemines de l’essentiel』(Fayard出版 260頁 18ユーロ)を出版した。
(Le Monde紙 2018年10月11日)