ゼムールとの討論会:なぜメランションはこの極右と乱闘したがっているのか

ゼムールとの討論会:なぜメランションはこの極右と乱闘したがっているのか

 

それはボクシング頂上対決の予告編かもしれない。もしくはひどいB級映画の予告編でも。ジャン=リュック・メランションとエリク・ゼムールが9月23日にBFMTV のスタジオで討論したいという意向を確認してから、このテレビ局は大きな賭けに出ている。

この対談は、「誰もが対比する」この2人の人物の間で喧々になることが予想されていると言わざるを得ず、この番組のスポット広告はほぼずっと闘いのBGMで声を荒げている。この極右の評論家サイド(*ゼムール)は、ヘイトの扇動でたびたび有罪判決を受けており、その反移民の主張を展開するためにあちこちのメディアに登場している。

もう一方で、フランス不服従の指導者で、社会の「クレオール化」の概念の信奉者(*メランション)は、力学的には2017年春に彼が実現した得票数からかけえ離れた、全く不十分なコンディションで2021年を迎えた。最近のHarris Interactive pour Challenge社の調査では、この2名の予想得票率は11%となっている。これは極右思想によって(*排他的に)完全防水することの信奉者たちと、それを封じるには廃油に手を入れなければならないだろうと考える人々との間の闘いであり、左翼を引き攣らせるであろう闘争にさらにスパイスを利かせようとする理由である。


「これはしっかりやらなきゃダメ」

70歳になるこの民衆の雄弁者(*メランション)とその側近はこのように自らを正当化する。例えばÉric Coquerelは「この政界の極右化の主要な媒介者」に対する「不可欠な衝突」について語る。「もしもゼムールに真の反論者がいたならば、この討論は必要なかっただろう。しかし、事実や主張となっているウソを比較検討する状況になってしまったんですよね」とこのセーヌ=サン=ドニ県の議員は言い、「だからこれはしっかりやらなきゃダメなんです」とも、ほぼ真顔で言う。同じ意気込みで、ジャン=リュック・メランションは「コテコテのル・ペン主義者」になってしまったこのかつての「華々しいコメンテーター」に対する闘いになるであろうと言う。

「彼は極右で、私が絶えず闘ってきたもの全てを体現している」と、彼はLCIでの3日間の討論会において9月20日夜に強調した。その証拠にフランス不服従のこの候補者は、この対談の日程やゼムールの件以外にも、今回の選挙戦の代表者たちとは、メディアや政治の現場で自分からたびたび討論を交えている。そしてこれは、陰謀論的理論である「Grand remplacement (総入れ替え)」の主唱者と対決するかなり前に。

例えば彼は2012年にパ=ド=カレ県のエナン=ボーモン町の国民議会選挙に登場し、マリーヌ・ル・ペンの縄張りで彼女に立ち向かうことを選択している。当時のその目的は?国民前線(国民連合の前身)を「街街で恐怖で」たじろがせることである。

その結果は?この旧社会党員にとっては辛い敗北(対立候補の得票数が倍増したのに対して21%)となり、そこで彼は極右の女性党首の当選を妨げることに貢献するのを楽しんだ。彼女は社会党の指導者によって第二次投票で打ち負かされている。


左翼にその地盤を確保する

「ジャン=リュック(メランション)は逃げ隠れしたことがない、自分にとって困難かもしれない時にも」と、エリク・コケレルはこの不運な経験についてまとめる、なぜなら「それが彼の信念の根底であり、彼は心底から反人種差別主義だからです。」

彼の選挙陣営の監督マニュエル・ボンパールのいうところでは、これらの論争の裏で、フランス不服従の中には、彼らの候補者が「ハリボテのゼムール」と極右とを狼狽えさせられる最も恵まれた立場にある唯一の人物であるとの確信がある。「ほかの大統領選の候補者たちを見ても、我々の言説がこの評論家(*ゼムール)のものと最も背反するものです」ともエリク・コクレルは言う。「それが反人種差別主義についてであれ、それ以外であっても。」

おそらくさほど華々しくはないモチベーションだが、この23日の2人の闘士の対決によって、社会党のアンヌ・イダルゴが選挙戦を始めたり、エコ主義者たちが彼らの一次投票を終了する時点には、ジャン=リュック・メランションにとっても左翼にその地盤を確保することが可能となる。雷を呼び寄せてしまう危険を冒して。

「これはバズらせるということ」であって、それがもたらす唯一の結果は「このエッセイスト(*ゼムール)のショッキングな見解を補強する」だけだと、21日にBFMTVでヤニック・ジャドは、左翼からの別の怒りの反応の 合間に強く批判した。この文脈において、一つのことが確かとなった。すでに2014年にRTL局で睨みあったこの2人の人物は、同日夜のFrance2局における以前の同僚Valérie PécresseとGérald Darmaninの討論会の影をかすませてしまうであろう。この2つのテレビ局にはそれぞれ違った雰囲気がある。

(Le HuffPostサイト 2021年9月23日)