ミヤザキ・ハヤオ、汎神論から政治的立場へ

1945年8月15日に太平洋戦争を終結させた、日本の敗戦70周年の記念式典の直前となって、日本のアニメーション映画の巨匠ミヤザキ・ハヤオは、夢と想像の人物から政治に関与する人物となった。日本のジャーナリズムを信用せず、7月11日に東京で彼は、20人ほどの日本外国特派員協会のジャーナリストに向かって訴えかけた。彼は1時間以上にわたって、アベ・シンゾウが日本を駆り立てている方向について批判した。すなわち、世論の大半が反対するにもかかわらず、政府は憲法の平和条項をひっくり返し、海外において日本が軍事介入できるようにするつもりである。

「進むべき方向とは反対の方向にアベは向かっている」とミヤザキは言った。もののけ姫や、千と千尋の神隠しの作者の声は、1994年にノーベル文学賞を受賞したオオエ・ケンザブロウや、海外で最も読まれている作家 ムラカミ・ハルキなどの現代文学の巨匠の声と、今や共鳴している。監督は、新たな米軍基地の建設に反対運動をしている沖縄県辺野古財団の設立者の一人である。「沖縄の軍備を縮小することは、東アジアの平和にとって反対に必要なことなのです」と彼は考える。

敵意のない世界を求めて
ミヤザキ・ハヤオは、日本が進めている戦争に対して決して非難を隠そうとしない。引退を宣言していながら (「僕は以前と何も変わっていません」)、74歳にして彼はさらに公然と立場を表明し、「過去を決して忘れてはなりません。この点に関していささかも政治的な議論がないなんてあってはならない。日本は、自らの侵略に対して深く反省しなければならない」と彼は断言する。アメリカの占領下に書かれた日本国憲法に記載された平和主義への、日本人の愛着について質問され、「敗戦直後、憲法の平和主義は日本人にとって光が差し込むような体験であったんです」。「私たちは1945年以前に起こったことについて正当化しようとすることをやめ、やってはいけないことはやってはいけないんだ、という原則を守らなければなりません。」ミヤザキ氏にとって「平和主義は日本の政治の礎石であり続けなければならない」のだが、ミヤザキ作品における環境保護論者および汎神論者の次元は、疑いなくこの認識を起源としている。そして彼の映画の成功は、敵意のない世界を彼が求めていることに、多くの日本人が共感していることを示しているのだと思われる。

その性能により日本の航空機の恐るべき兵器となった零式戦闘爆撃機の企画者、ホリコシ・ジローに捧げられた映画 風立ちぬ(2013年)の公開の際に、ミヤザキ・ハヤオはメディアにおいていろいろな発言をしている。軍事体制内にある主人公(実際に飛行機への愛情によって彼は軍事体制に手を貸した)は、人格が解離しており、それは曖昧で、あるものにとっては意味不明だが、それは解離していることが発明家をあらゆる倫理的な責任から免除するように思われたからである。監督の目的は倫理的な責任では全くなかった。

この作品の公開時のスタジオジブリの雑誌「熱風」にて、彼は戦前の空気を「ヒステリー」と形容し、軍国体制の責任を再想起して、アベ・シンゾウの歴史修正主義を「私たちにとって過去は、未来で私たちに方向を示す唯一のコンパスである」として告発している。現代日本文化の国際的な普及における主要な貢献者でもある監督が、これらの態度表明のために、右翼によって逆説的に「反日だ」と糾弾される結果を招いている。
(Le Monde紙 2015年7月23日)