日本でピケティは、アベノミックスで増大する格差をマークする

「日本国首相、アベ・シンゾウは道を間違えている」これが、先日のフランス人経済学者トマ・ピケティの日本訪問から体得した教訓であるとして多くの解説者たちが語っていることである。

世論の関心は「イスラム国」による日本人人質の殺害に流れたものの、同じ時期に「20世紀の資本論」の著者が日本にいたことは、マスコミでは他国と同様にブームを引き起こした。

しかし、彼はまた予想外の現象も引き起こした。つまり、先進国における格差に関するピケティ氏の諸概念は、経済成長を立て直すために2012年に首相が鳴り物入りで始めた政策 アベノミックスに批判的な人々の議論のような、日本の政治的文脈にも荷担していたのである。

日本の野党の主力ではある(しかし全く衰え果てた)民主党は、中道左派を目指しているが、国会討論においてたとえばこの得意技を使う。(?)

彼にはすでに解釈学者たちがいて、イケダ・ノブオによる紹介本(60分でわかるピケティのポイント)は、2014年の年末からすでに第5刷、一方でこれに先立って出版されたタケノブ・ミエコによる著作(ピケティ入門)は第7刷との情報である。

所得の「不平等」について経済学者が顔色を窺いながら語るような、「格差(inégalité)」に関してはなおさらといったこの国で、ピケティ氏はいささか小枝を振り払った。

日本の人口の16%が貧困層の基準値を下回っている
いずれも敬意ある言葉であった。ピケティ氏は、アベノミックスに対して慎重に懐疑的な立場にとどまる。「私が判断しえたとおり、昨年行われた消費税の増税には、経済成長という観点から成功と言えるものは一つもなく、私にはこれが取るべき正しい方向であるとの確信が持てない。」と彼は言っている。次の消費増税(この時点で8%から10%になる)は、2017年に延期されている。

東京大学やアサヒシンブン社のホール、Maison franco-japonais Tokyoでの講演や、数え切れないほどのインタヴューを介して、このフランス人経済学者は、税制を若年層に有利になるように再均衡化し、給与や社会保障による保護の観点で差別化された期限付き契約(女性を手始めとした)による雇用者が犠牲となっているような労働市場を基盤とした格差を軽減することの必要性を強調した。ところが、 正規雇用をもつ人々は減少しているのに、非正規雇用者数は労働力人口の38%と増加している。

富裕者層と貧困層の間にある不平等を評価するジニ係数は、ドイツやフランス、イタリア、カナダではさほどでもないのに比較して、日本では際立って高く、そして日本の人口の16%が、OECDの定義する貧困の基準値(規定では可処分所得が平均年収の中央値を下回る)以下で生きている。1月下旬に行われたアサヒ・シンブンの調査によれば、質問された人たちの53%が、自分たちの生活が「アベノミックス」で改善するだろうなどとは考えていない。
(Le Monde紙 2015年2月9日)