コレエダ対ニツポン政府のパルム・ド・啀み合い

コレエダ対ニツポン政府のパルム・ド・啀み合い

この監督は、アベ・シンゾ首相の進めている経済政策と社会政策への批判のために物議を呼んでいる。


ニツポンの映画にとって、それはこの何十年間の興行成績で最も大きな成功だった(ただしアニメは除く)。万引き家族は、6月に公開されて以来、何百万人もの観客を魅了している。だが論争がおこらなかったわけではない。一連の些細でろくでもない出来事とともに織り成されていく家族のキヅナにこだわり、ニツポンにおけるキツイ労働条件や社会扶助の限界について疑問をあげてるこの優しくて愛情に満ちたお話を、すべての人々が評価しているわけではないのだ。

この監督は虐待児童の受け入れ施設をかなり取材している。金銭的に困難な条件にある複数の家族とも実際に話をしている。政府の発表によれば、子供たちの16%が、可処分所得が所得中央値の1/2を超えないという貧困家庭で生活している。特に片親の家族ではこの状況は危機的で、それというのも母親と複数の子供のパターンが最も多いこの世帯のうち、その54.6%が貧困のうちに暮らしている。OECDによれば、これは先進諸国で最悪の数値である。

この作品は同様に、労災の犠牲となった賃金労働者への十分な援助や有効な助成がないことも独自のやり方で告発している。それとなくアベ・シンゾ政権が推し進めている経済政策や労働改革のことだなとわかる。この母親は職場をクビにされており、このこの役柄を介してこの監督は、ニツポンの労働者の40%が非正規雇用になっていることをほのめかす。

かなり国家主義的で、その経済政策は成功しているんだと主張しているアベ氏のニツポンでは、これは気分のいいものではない。アベノミックスは雇用問題を解消しているんだし、企業は記録的収益をあげることができているんだ。


「ニツポンの恥を描いた」
「この映画は反日だ」ツイッターではこう書かれた。コレエダ・イロカズは、「ニツポンの恥を描いた」「犯罪行為を助長した」と非難されることとなる。

評論家たちは、この映画のテーマのみならず、この監督とアベ政権との複雑な関係によってさらに掻き立てられた。コレエダ・イロカズは現在行われている政策に何度も反対を表明していた。彼は、海外での同盟国を支援するための軍事介入を可能にした2013年の法案に反対する示威行動に参加している。現在政権にある自由民主党(自民党)を、数々の投票に先だってニツポンのメディアに圧力をかけたとして公然と批判している。

この首相はニツポン人がちょっとでも国際的に成功を収めればそれが誰であれすぐに祝意を伝えてきたのに、それゆえこの監督のカンヌでのパルム・ドールには祝意がいただけなかった。コレエダ氏は、この栄誉を祝する文部省のレセプションへの文部大臣アヤシ・ヨシマサからの招待を断った。

「「国際的な利益」や「国家の政策」に従って映画が作られた時代があった。過去に引き起こされたこういった不幸を考えるなら、おそらく公権力とは賢く距離を保つのが一番だ」と彼はフェイスブックのメッセージで説明している。

彼の態度は、世論の一部からは喝采されたが、極右からは制裁を受けることにもなり、彼らは、文科省所管の文化庁から2000万円の補助金を貰っていながら、彼は当局を虚仮にしていると非難した。あるネットユーザーは、彼のフェイスブックのメッセージに「公の金を使ってこんな発言をするとは無礼だ」とレスしている。

批判的なこの流れに対して、監督は社会の偏向を非難する新たな機会となったインタヴューを何度も行う。中道左派の日刊紙アサイに7月に応じたインタヴューでは、この監督はこうして「今の社会は犯罪を余儀なくされた人々を完全に無視している」と気付いたのだ。

さらにコレエダ氏は、ヨーロッパでは公的融資の付与を受けても、作品による当局の批判は禁じられないことをあげて、一般的なニツポン人が補助金をある種の「公的なお恵み」だと考える傾向を嘆く。「公的な支援を受けるためには当局への服従が条件になるなら、文化は衰滅する。」
(Le Monde紙 2018年12月12日)