フクシマの災害: 見えてきた東電経営者3名の訴訟

2011年のフクシマの原発災害が始まって以来初めて、罹災した原発の所有者でもある東京電力(東電)のトップたちが裁かれることになる。企業の前会長 カツマタ・ツネヒサと2人の副会長 ムトウ・サカエとタケクロ・イチロウが、業務上過失致死の疑いで2月29日に捜査に入った。

今回の決定は、2012年に始まった訴訟手続が実現したものである。大部分がフクシマ県出身者で構成されたある市民グループが、東電と政府の数十人の人物に対して訴訟を起こしていた。

検察側は、2011年3月11日に襲来した地震津波のような規模のものは、政府と同様に東電にも予測できなかったとして、2013年9月にこの訴訟を却下していた。そして、今回の原子力災害は死亡者を出さなかったことに公式にはなっている。

このため原告は戦略を換え、この3名のトップに訴えを集中し、検察審査会のシステムに訴えることにした。法務省のサイトによれば、この審査会制度は無作為に選ばれた11名の国民で構成され、「検察が訴追を行わないとした場合に、その判断が適切であるか審査」をしなければならない。訴追が行われないことは不当であるとの判断を2月26日に受け、審査会はこの3名の人物に捜査を受けてもらうことにした。


ある病院からの混乱した避難
審査会は自らの選択について、この原発に15.7mのツナミのリスクがあり得ると警告した2009年の一本のレポートを引き合いに出して説明した。この原発の敷地を襲った波の高さは、13mであった。「危険性を承知しながら、東電のトップたちは何らの予防措置も取らなかった」ことを審査会のメンバーたちは明らかにしている。この電力会社の責任者たちは、44名の死者についても責任を問われており、この人たちは、今回の災害にあたってある病院から大混乱の中で避難する際に死亡したものである。また責任者たちは、災害当時にこの原発で水素爆発が起こった際の14名の消防隊員と自衛隊員の負傷に対しても別に起訴されている。

しかしながら法曹界の専門家たちは、この3名のトップが有罪となる可能性はほとんどないだろうと考えている。検察は、この死亡は原子力事故とは直接関係していないであろうと考えており、その悲劇の防止において東電に怠慢があったことを実際に示すことは難しいはずである。

いずれにせよ、彼らに対する捜査が、あの災害、6基の原子炉のうちの3基が融解し、その解決には少なくとも40年を要し、結果的に今も計り知れない影響を公衆衛生と環境にもたらしているあの災害の5周年記念となる数日間に行われる。これは結果的に、数万人の人々が自宅に戻ることを未だに妨げており、そのことについては議論がやまない。

この件に関して東電は、事故当時に情報を隠匿していたことを2月24日に認めた。2011年3月から5月にかけて、東電は「メルトダウン」という言葉を口にしようとせず、単純な「炉心損傷」の方を持ち出していた。しかし、規定では5%を超える炉心の損傷の場合には、可及的速やかに「メルトダウン」を宣言・申告することを義務付けている。ところが、推定された3基の炉心の損傷は、25%から55%に及んだ。


原子力の再稼動に好意的な政府
「炉心損傷かメルトダウンか、緊急事態にあって何としてでも炉心を再冷却するという私たちの反応のレベルでは、そんなことには違いはありません」と東電の広報 ナカクキ・シュンイチは切り抜ける。東電は、5%という規則はよく知らなかったとも断言する。東電は、この問題に対して内部調査を進めることになっている。

今回明らかとなった新事実は、日本の「原子力村」ととりわけ東電、これは他の日本の電力会社と同様に、2007年に出された報告書の中で原子力発電所に関する問題点を隠そうとしていたのだが、これらが非難を受けている隠蔽体質が、フクシマ後に債務を負っているにも関わらず持続していることを確認しようとしている。

このことは、アベ・シンゾウ首相の政府が経済的な理由から原子力発電所を再稼動をさせるべく働きかけるにあたって、懸念とならざるを得ない。関西電力保有するタカハマ原発の4号炉は、その数日前に敷地内に放射性汚染水漏れが見つかっていたにも関わらず、2月26日に再稼動している。

これは、フクシマの災害の結果として日本の原発が停止してから4番目に再稼動された原子炉となる。その前日、元総理大臣 カン・ナオトは、これはフクシマ後に得た確信であるとして、原子力には反対だと再表明した。NGOグリーンピースによる海底汚染調査の開始に立ちあった際に、彼は「私たちはこのようなリスクをとる必要はない」と断言している。「私たちは、将来世代のために、安全かつ安価でしかもビジネスチャンスのある再生可能エネルギーにシフトすべきだと考えています。」
(Le Monde紙 2016年2月29日)