日本にて、難しいフクシマの復興

日本にて、難しいフクシマの復興

原子力災害から6年がたったが、原子力発電所の解体現場は、その経費、その危険さ、その複雑さのために途方もないままである。


2011年3月11日に、地震津波によって損傷を受けた福島原発の4基の原子炉の解体は、その経費と危険性と複雑さのために、規格外な現場のままで、そこではなかなか進展がみられていない。

2017年の終わりに、現場を稼働させている東電は、1号2号発電ユニットに着手するに先立ち、3号炉の冷却水からの核燃料の除去に着手しなければならない。4号炉は、2014年にすでに核燃料が取り出されている。

しかしこの数週間で明らかになった事実は、1号炉から3号炉の溶けた核燃料がどこにあるのかを突き止めるための屈折した努力である。3月9日に東電は、1号炉の冷却槽の下の一帯を調べるため、イタチが開発したロボット ピーモルフを格納容器に投入すると発表した。「放射線量計と防水カメラを搭載したこのロボットは、原子炉の貯留水内の放射能レヴェルが、どのように分布するのかを解析するであろう」とこの企業は説明する。

1月以来東電は、数百シーベルトのレヴェルのデータを何回か得ており、これは核燃料がすぐ近くにあることを示していて、その核燃料は貯水槽を突き抜け、格納容器の底に沈殿しているのだ。その場所が判れば、これを除去する方法を決めなければならない。政府と東電は、この夏にそれを行って、2021年に操作を始めるため2018年にその詳細をまとめることを想定している。

それと同時にこの企業は、溜まっていく汚染水という頭の痛い問題にずっと直面しており、それは再冷却に使用した水と、原子炉の地下を流れ、汲み上げて処理されなければならない地下水とに由来している。この地下水の流れを止めることを目的として、350億円をかけた作業の末に、2016年夏に1号炉から4号炉の周囲の土壌が凍結されたが、期待された結果をもたらさなかった。

百万立方メートルの汚染水が、この敷地に貯蔵されている。それを処分するための解決策は計画されていない。海洋への投棄は違法である。

これらの試練をみると、すでに40年はかかるとされていたこの発電所の解体に、新たな遅れと経費の増大が懸念される。2016年11月に政府は、この災害の解決に割り当てる総予算額を、従来の11兆円から20兆円になると修正した。


住民を安心させる
別の問題点は、住民を安心させることだ。福島の経済を再び活性化させたいとして、政府は除染に大規模に取り組んでいる。その目標は、一般住民の被曝レヴェルをフランスと同じ法的被曝基準である年間1 mSvとすることだが、その費用は5.5兆円となる。

その結果に満足した政府は、3月末に新たに4市町村・3万2千人の住民に対する避難命令の解除を発表した。「これで、フクシマで避難命令が下されている地域は2.5%だけとなるだろう」と復興大臣イマムラ・マサイロは強調する。

行政は、とりわけ再生可能エネルギーとロボット工学、さらに漁業と農業を主体とする伝統産業への投資を誘致しようとしている。このために、食品や魚や肉や果物や野菜の被曝レヴェルを検査するネットワークを確立している。その基準は低く設定されており、ヨーロッパでは1kgあたり1000 Bqであるのに対して、日本では100 Bq/kgである。

「私たちはここで、50市町村からの製品を取り扱っています。これは専門家の義務なのです。自分の製品を誰でも無料で測定してもらうことができるのです」とコウリヤマ農業技術センターの副所長クサノ・ケンジは説明する。このセンターでは、放射能検出測定装置の製造メーカーであるキャンベラ社の、1台2018万円の機械を11台回している。検査センターは、県内にもう一ヶ所設置されている。

製品は、どれもが同じ処理をされるわけではない。米の場合、毎年30kgの袋1000万個が全部管理される。しかし、例えば魚の場合には、最も高い被曝水準が公示されている3ヶ所の探索ポイントから採取されたサンプルのみが検査されている。

情報公開への配慮から、これらの情報は複数の言語に翻訳されたあるサイトでオンライン公開されている。彼によれば、2016年には、川魚と山菜を例外としてこれ以外に基準値を超えた製品はない。


原子炉の再稼働
「これらはいずれもIAEAとFAOからは好意的に解釈されています」とイマムラ氏は強調し、特定の国や地域による福島の食品の輸入禁止を「合理的ではない」とも考えている。

フクシマ県について知ってもらうための作業を通して、屈折した努力も行われている。フクシマの食品を試食し味わうイヴェントが、東京でいくつも行われている。ボーイズバンド Tokioの映像が大量に使われている。

政府にとっては、停止している原子炉の再稼働が問題である。43基の原子炉のうち、5基がすでに再稼働している。ゲンカイ町の町長キシモト・イデオは、彼の町に造られた原子力発電所の第3、第4発電ユニットを再稼働することに同意した。1月には原子力規制委員会が、この原発はフクシマ災害後に設定された基準を満たしているんじゃないかと推測している。

だからといって、この部門によって作られたウソが増大させた原子力の悪いイメージは、ずっと続いている。販売部門は、フクシマブランドの製品を提案していくことは相変わらず難しいと判断している。そして、避難命令が解除された地域には、避難民の10%のみ、それも高齢者ばかりが戻って来た。
(Le Monde紙 2017年3月12日)



フクシマからの避難者、いじめの犠牲者

地震から6年が経ち、支払われた補償金が疑念と妬みを生み、一方では何例かのタカリが明らかとなった。


「フクシマから来たら、白血病ですぐ死んじゃうだろ。」東電に対する訴訟の一環の中で、1月12日に証人である家族の母親から報告されたこの言葉は、東京の小学校に通う彼女の息子に浴びせられていたものだ。この母親によれば、ある教諭は「中学生くらいで死ぬかもね」などとまで言っている。何度もいじめを受け、さらにこの子供は同級生からタカリを受けた。そしてその母親は、このまさしく虐めを「息子が原発避難者だというだけでいじめられる」と嘆き悲しむ。

2011年3月のフクシマの原子力災害で、自分たちの家を放棄することを強いられたショックに加えて、別の場所で生活を再建しようとしているたくさんの家族が、同じような行為を告発している。2016年の終わりには、横浜の13歳の中学生が、クラスの同級生たちから「菌」呼ばわりされて、恐喝され150万円を巻き上げられたケースが報道された。新潟では、ある小学生が同級生と担任から同様の侮辱を受けた。担任は否認したが、複数の生徒の証言と照合され、彼はこれらの事実を認めて謝罪した。

約8万名のフクシマからの避難者にとって、問題は子供たちの受ける虐待や、被曝してしまったという不安にとどまらない。移住した人たちは、結婚し子供を産む相手が見つからないのではないかと思っており、この感情は、ヒロシマナガサキの原爆生存者が受けた仕打ちを思い起こさせる。


すごく悲しいできごと
しかし、軋轢を生んでいるものは何よりも補償の問題であり、それは補償が妬みを助長させているからである。「補償金をもらっているのに何で働くのですか」と35歳の女性に投げかけられ、彼女は「すごく悲しいできごとでした、私には働く権利もないのかと思うと」と言っている。別の女性は、インタヴューを受け、「私の状況については話したくありません。補償の問題が取り上げられ、うちの子供たちがいじめられるかと思うと怖いのです」と付け加えた。日刊紙アサイ福島大学の地方行政の専門家イマイ・アキラによって、1月と2月に行われた調査によれば、避難者の60%以上がこのタイプの侮辱を受けているという。

フクシマ県内でも同様に、 緊張は日常的である。「私たちは近所と仲が悪いんです」と災害後に退去となった村のひとつイイタテ村の農家で、フクシマ市のそばに農地を再建した、シゲアラ・ヨシユキは語る。「東電の補償を受け取った」という事実が、妬み嫉みを引き起こした。「この問題は珍しいことではないのです」とイイタテ村の農業振興課長スギオカ・マコトは認めている。
(Le Monde紙 2017年3月12日)