政策金利と為替:イエレンとクロダの麻痺状態

4月27日と28日に、アメリ連邦準備制度(FRB)と日本銀行(日銀)は、数時間の差をおいてそれぞれの会議を相次いで終わらせた。両者はいずれも現状維持を選択した。もしもそのモチベーションが異なっているとしても、それらには、いずれも麻痺状態とさほどかわらず著しくもつれ合った状況にあるという共通点がある。

2015年12月、FRB議長 ジャネット・イエレンは、8年間あまりほぼゼロだった政策金利を0.25%慎重に引き上げた。しかし、引き上げはそこで止まった。それ以来、イエレン女史は機会を待っている。彼女は、アメリカ経済は金利、同義語としては利息(?)のさらなる引き上げを支えられるほど、安定していないのではないかと懸念している。


罠に嵌った
しかし、慎重さは必ずしも美徳を生むものではない。ある経済学者たちは、FRBは待ちすぎたのだとも考えている。そして、アメリカの景気循環サイクルでは、経済政策が正常化を成し遂げる前にひっくり返りかねないと考えている。彼らがもしも正しければ、経済後退となってしまった場合に、FRBは、そこで活力を維持できるような実弾がないという怖ろしい袋小路にいることになる。

日本銀行総裁クロダ・ハルヒコ、彼もまた挟み撃ちにあっている。市場と多くのアナリストたちは、4月28日に彼は、日本では常に停滞しているインフレーションを、再び促進することが重要と判断したものととらえた。もし彼がそう判断してないなら、おそらくそれが何の役にも立たないことが分かっているからである。もちろん、日本の物価の沈滞は構造的問題が生み出したものであり、それは通貨政策とは関係がない。日本企業は、生産性が衰えていて、労働力は不足しているにもかかわらず、賃金を上げない。

首相 アベ・シンゾーのみが、これらの不利な条件と闘うことができる。それは日銀ではないのだ。それにもかかわらず、日銀は罠にはまってしまっている。たとえ、つっかい棒にしたその通貨政策が、インフレと経済成長に対してたいしたインパクトをもたなくても、日銀にはそれらを継続する以外には選択肢が他にはほとんどない。


公的負債
それも当然で、日本国債の償還量が減れば、直ちに国債利率が上がることになったりする(?)。公債の価値は利率とは逆に変化するため、公債を大量に保持する日本の銀行や投資家に損害を与えるものはこれである。そのような血まみれの損失を引き起こさないよう、それゆえ日銀は国が発行するすべての債権を購入し続けることを義務付けられており、それからというもの国家の公的負債はもう少しでGDPの250%あまりとなる。非常に不健全な財政である。

後戻りは難しく、前に進むことも難しい... これにあたるジャネット・イエレンとクロダ・ハルヒコは、きっと徹夜に違いない。2017年中に原油相場の再上昇でもありうるならば、彼女らもまた眠りにつけるだろうか。 もちろんこれは、燃料費の上昇を介して海外から持ち込まれる「厄介な」インフレーションを再びもたらしたりもするのだが、これは個人購買力を落とす。今日「良い」インフレーションとされるもの、それはすなわち消費と経済成長にとって有利となる賃金の引き上げによってすくすく育つインフレである。
(Le Monde ÉCO&ENTREPRISE 2016年5月1日)