ニッポン: この国を当惑させている強姦事件

ニッポン: この国を当惑させている強姦事件



28歳の日本人ジャーナリストが、2015年にアベ・シンゾ首相と親しい人物により強姦された(voilée)として告訴している。この若い女性に告訴されても、加害者と想定される人物は今もなお自由なままである。


彼女は、自分の一件は「社会を換えることができる」とLe Figaro紙に語る。28歳の日本人フリージャーナリスト、イトー・シオリは、2年前に政権に近い人物によって薬物を投与され強姦された(droguée et voilée)として告訴した。それでも、その加害者と推定される人物には、司法によって脅かされる懸念はなかった。

西洋社会が性的ハラスメントに対する #MeToo 運動 の只中にある今、イトー・シオリは10月に刊行されたその著書Black Boxに自らの闘いを記している。そこで彼女は、事件の解釈、警察がほのめかしたこと、日本の訴訟手続きの中で受けたいくつもの屈辱について描写している。


「頭がグラグラして」

2015年4月3日金曜日、当時ロイター東京支局の研修生だったイトー・シオリは、東京のあるレストランで、ヤマグシ・ノリユキと夕食をとった。彼はアベ・シンゾ首相の伝記を書き、TBSネットワークのワシントン支局の責任者であった。

「私が希望していた彼の編集部での研修について、彼が事務的なあくまで形式的なメールを送ってきました」と彼女は2017年10月24日日に説明している。
50歳代の男性とのこの夕食で、イトー・シオリはビールと少量のサケを飲んだ。

「1時間ぐらいたったところで、私は頭がグラグラして、トイレに入りました。洗面台に頭を乗せたことを覚えています。それから、もう後は何も」と、Les Echos誌によれば彼女は記者会見で語る。


「彼は私に薬を飲ませたのだと思います。」

それはブラックホールだ。この若い女性が朝の5時頃にホテルの部屋で目覚めると、腹部に強い痛みを感じる。ヤマグシ・ノリユキが彼女に乗っており、しかも裸で、彼女を強姦している(violer)最中だった、とこの若い女性は語る。

イトー・シオリは彼を押し返して浴室に逃げ込んだのだと言う。「これが悪夢の始まりです」と彼女は回想する。「記憶が全くなく、このホテルにどうやって来ていたのかわかりません。彼は私に薬を飲ませたのだと思います。」と、この若い女性が10月24日の記者会見で小声で語ったとOuest France紙は記している。

イトー・シオリが浴室から出ると、ヤマグシ・ノリユキはまたもや彼女を強姦(violer)しようとした、と彼女は語る。しかし、彼女はなんとか逃げ出した。加害者と推定される人物は、それ以来彼らの交渉は同意に基づいたものだと明言する。


裁判官は逮捕状を発行する

その5日後に、この若い女性は地域の警察署に行く。「でも、警察官たちも私に告訴されたくないみたいなのです。彼らは私に、こういうことはよく来るけど、捜査を進めるのが難しいのだと説明しました。キャリアをダメにしてしまうよ、とか一生が台無しになるよ、とか」と彼女は言っている。

「この時私は、ニッポンの法的・社会的なシステムは、性的暴行の犠牲者に対処できないのだと解りました。」

イトー・シオリが何度も捜査を要求して、警察署はこの件を引き受けた。警察官たちは、彼女の供述を検証し、加害者と推定される人物と犠牲者をホテルまで乗せたタクシーの運転手から事情を聴取し、監視カメラの映像を確認した。捜査のあと、裁判官はヤマグシ・ノリユキの逮捕を決定した。


中止となった逮捕

2015年6月8日、警官たちは容疑者を成田空港国際線ターミナルで待ち構えた。しかし、本件の担当刑事が一本の電話を受ける。彼は担当を外され、逮捕は中止となった。

「その数分間のことはとてもよく覚えています。すぐにある捜査員が電話をかけてきて、もう彼らには何もできることはないと言いました。たった今ドアが開き、ヤマグシが彼らの前を通り過ぎたと。こんなに絶望的になったことはありませんでした」とイトー・シオリはその意中を語ったとLes Echos誌は記している。
この決定を下したのは、警視庁刑事部長であり、内閣のトップ、アベ・シンゾとも親しいナカムラ・イタルである。彼は逮捕(interpellation)の中止を命じたと言っているが、いかなる政権の関与も否定した、とLe Monde紙は報じる。


世論を動かす

この女性ジャーナリストが強姦で告訴している男性を公訴するよう求めた申告は、不起訴処分となった。これ以後、イトー・シオリはヤマグシ・ノリユキに対して民事訴訟を起こしている。彼女は、この事件を公表し語ることで、ニッポンにおける性的侵害の問題に関する世論を動かせればと考えている。

「私はジャーナリストです。私の個人的な事例は大したものではなくても、しかし社会を換えることができるのです」と彼女はLe Figaro紙でその期待するところを語る。
ニッポンは、公式には世界で最も安全な国の一つである。法務省の概算では、ニッポンにおける強姦は人口10万人あたりで1例であり、それはフランスの19分の1、アメリカの37分の1である。

しかし、日本の専門家たちは、強姦の95%が届け出られていないのではないかと考えている。届け出られても、その過半数の事例がお蔵入りとして処理されている、と裁判官タナカ・カズコはLe Figaro紙に指摘している。彼女は「まれに受理しうる訴えがあっても、一般的には執行猶予付きの刑罰となるんです」と遺憾に思っている。
(BFMTV サイト 2017年12月28日)