バニュルス地域と自分のブドウ園から出て行ってくれと言われた二人の日本人

バニュルス地域と自分のブドウ園から出て行ってくれと言われた二人の日本人


行政法は、理性の知らない理由を持っている。Banyulus-sur-Merで暮らすある日本人のぶどう園経営者のカップルが、この4月に県より、フランス国内から退去せよとの通知を受けた。ショージ・リエとイロフミは、ぶどう畑を取得するという夢を抱いて2011年に合法的にフランスに入国しているので、この決定は痛ましいものであった。しかし、こういった賭けに出るにあたっては、自分たちの技術を高めてから農地開発責任者とワイン醸造学技術者の資格を取得しようと考え、彼らはボルドー、さらにはブルゴーニュのブドウ畑と醸造所で、農業労働者や酒庫係として働いている。彼らは2016年には、自分たちのワイン、Pedres blanquesを造るまで成熟していた。リエとイロフミが住居としたこの土地をもっぱら好むワイン。無添加有機栽培ワインで、ブドウの収穫は手摘みである。ご家族や銀行からの支援を受け、二人はBanyulus-sur-Mer/Colliourにある3.5 haの土地の取得に約1900万円を投じた。しかし、商品化が可能だったのはわずかに1樽だけだったので、ここで県は十分な可能性を示すことができなければ、国外退去とせざるを得ないと決定する。


「Can Rocaのテーブルにも」
「月に2000ユーロは収益を出さなきゃダメだと彼らには言ってるんですがねぇ」と彼らの弁護士ジャン・コドニェはこぼす。彼は、県によるこの裁定について、モンペリエ行政裁判所に疑義申し立てをすることとした。彼の論法は、彼によれば彼らの活動には採算性がないだろうと断言している県の論拠が示すナンセンスさである。「県が二人に示している憎悪が理解できません。彼らには一貫してワイン醸造の分野に関与してきた経歴があります。彼らは見向きもされていなかった土地に投資することを決意し、そして彼らの最初の樽とその成功がありました。次の2番目の樽は、その75%が予約済みです。」彼らの顧客に関しては、世界で最良のレストランとの認定を定期的に受けているジェローナのCan Roca、それにパリのVerre Volé、もしくは地方であればVia del Viのテーブルにも並ぶ。


彼らが去るようなことになれば、大きな損失であろう
県に対して別の議論が展開されている。無添加有機栽培の製品はいくつかの国において経済的な勢いを持ち、それに後押しされる形で、彼らのワインは海外への輸出がとても良好である。わずかの間に、他所の15余りの国がその魅力に取りつかれている。明らかに日本でも、またアメリカ、オーストラリア、デンマーク、スエーデン、シンガポール、そしてまたイギリスでも。「彼らの製品は、顧客が高品質で環境や社会生活においても有意義な製品ばかりを購入するという、革新的な経済活動に組み込まれているから意味があるのです。県がやっているように、このアプローチには実現性がないなどというのは、ナンセンスなのです。厳密で専門性の高いアプローチに乗り出しているのです。」

ペルピニャンのSalon des vinsの主催者であり、Sloow* food Pays catalanの代表でもあるジャン・レリティエも同じ考え方をしている。「彼らがワインを作ったのはまだ一年たらずだが、まさしく成功している。ブドウの品質、収穫時期の適切な選択、醸造過程における日本人特有の正確さと完璧主義。彼らが去っていくようなことになれば、私たちみんなにとって大きな損失になることは間違いありません。」こういった常識的な判断がこの情勢を変えるのかどうかはまだ分からない。彼らの未来は、彼らの退去に関して9月に裁定を下すであろう行政裁判所の手中にある。


推進要因
この2人が、生産者たちやフランソワ・カルヴェ上院議員のような政治的大物からの多くの支持を得たのであれば、それはリエとイロフミが、地域の生産者たちが輸出を試みることを援助することを、おろそかにしなかったということだ。「自分たちの製品をニツポンで販売するために、彼らの日本での連絡先を利用させてもらったブドウ栽培家が何名かいるのですが、このことが示しているように、二人は我々の地域とニツポンとの架け橋を確保してくれたのです」とコドニェ弁護士は詳細に語る。「私たちの領土の発展における推進役であるという、彼らの役割を見なければ、彼らが将来的で徳の高い環境へのアプローチの一端を担っていて、彼らが資金を投じようと決意したこの土地を心から愛しているからこそ、それは礼を失しているのです。」
(L'Indépendant紙 2018年 7月1日) *原文ママ