Vie et Destinは完璧な小説である

彼らの人生を変えた一冊 特集

Vie et Destinは完璧な小説である
Leïla Slimani, 2016年ゴンクール賞受賞作家


10年か15年前、私はある書店でとてもどっしりとした本を見かけました。それはVassili Grossmanの『Vie et Destin』でした。長い間私はロシア文学の魅力に長い間とりつかれていたので、これは必ず気にいるわ、と思いました。登場人物がとても多いのですが、あっという間に引き込まれました。

スターリングラード戦やソビエト連邦内の拘留状況について描かれたページは、まるでルポルタージュのようです。とても厳格なリアリズムがあります。しかし、文学的にはこれはトルストイの系譜にあります。多くの登場人物が心に迫ります。とりわけ、ある母親が息子に最後の手紙を書く...

私にはまだ子供がいませんが、この手紙はすごいと思います。この手紙はそれから何度も読み直しました。これはファシズムと他者の憎悪についての偉大な作品です。20世紀に何があったのかがよく分かります。

ナチズムと共産主義の対比を今までにない手法で行うことで、あらゆる全体主義の体制はマイノリティーを排除し、立派な心(Les sentiments gérénéreux)を叩きのめそうとするのだと示しています。しかし、人間性について描かれた偉大な作品でもあり、私たち一人一人のうちにある悪を描いたものです。奇をてらうことなく、この小説はとても透徹しています。

だからこそ、そこで美しいことがおこると、それがよりいっそう美しい。私はこの本そのものの歴史から、この本が発禁処分を受けた方法から学びました。

これは文学のもつ力を雄弁に物語っています。それは、あらゆる体制に強い恐怖を与える武器なのです。そして『Vie et Destin』はまさに完璧な小説(un roman total)であって、私にとってたどり着けない地平です。これを執筆していたときの著者の精神状態はどうだったのか、きちんと知りたいという気がしていました。私はこの作品を、その夏に2週間で読んでしまいました。またいつの日か、どうしてもこれを全部読み直したいと考えています。

近著『Sexe et mensonges』(les Arènes出版)
(L'Obs誌no.2803, 2018年8月1日)