ジャック医師とファム=トラン女史

l’Obs誌セレクション

『DE RAGE ET DE LUMIÈRE 』(*情熱と光)

Jeanne Pham Tran著 Mercure de France出版、216p, 19,5ユーロ

 

★★★☆ これはJeanne Pham Tranの挑戦である。もしも無口な医師Jack Pregerを語らせることができたなら、その時彼女の母親は回復するだろう。彼女は癌でジャンヌ・ガルニエ メディカルセンターで死亡する。「ストリートメディカル」のパイオニアと、対症療法になっているこの元教員とを隔てる8000kmの距離を無効にするらしいこうした「呪術的思考」に支えられて、このEquateur出版の若き編集者は2018年にカルカッタに旅立っていた。映画館で、ジャンヌ・ファム・トランはジャック・プレガーのドキュメント映画を見ていた。彼女はこのベンガルドンキホーテ、救援機構カルカッタレスキューの設立者に魅せられていた。彼はもっとも恵まれない人々をケアし、もっとも重症な人々を救い、家のない人々に対して癩病結核HIVの予防接種をするため、87歳にしてまるでジャコメッティの石像のように上半身を突き出してスラム街を往来し続けていた。彼女は、彼にその生涯を語らせて一冊の本とし、彼を英雄にしたいと考えていた。しかしこの男、「老いた難物」は栄光を求めない。自らの聖なる生業を何の変哲もないもの、美徳をあたりまえのことと考えていた。彼はビールを飲み、パーセルを聴きながら鼻を鳴らし、論拠もなく聖霊にすがり委ねた。この「シティーオブジョイの聖人」はファザー・テレサのように思われてしまうことを頑なに拒んだ。そしてそのために、その繊細な頑固さでジャンヌ・ファム・トランからついに信頼を得ることとなった。この信頼のおかげで、この「21世紀の勇敢な騎士」の肖像ができたのだが、これを本人が気にいることはなかった。しかし彼の生涯は小説とするにふさわしい。マンチェスターポーランド人の両親から生まれ、将来はラビになるべく約束されたユダヤ人で、カトリックに改宗した彼はウェールズで農家となり、35歳でダブリン王立外科医学院で学ぶため148エーカーの農場と牛、羊たちを売却した。その後すぐにこの4児の父親は医療に従事するためバングラデシュのいくつかの難民キャンプに行き、見捨てられた人々に路上に張られたブルーシートの下で献身的に無料医療を行うためカルカッタに戻り、投獄されたりした後で、やっと医療に従事する認可を受けている。「時にはヒトがその人生を選ぶのではなく、人生が我々にそれを選ぶのだ」、気難しい医師ジャックはこの若きフランス人女性に漏らしている。彼女は、自らの癌と闘っている彼女の母親を想い続けながら、彼が不正と疾病に対して挑むのを見ていく、それはまるで母親がヒトに「聖霊」のもつ唯一の力によって他者を救済するよう求めていたように。息をひきとる前に、娘に「美に気を配ると約束してほしい」と言うことになる一人の母である。この処女作で、彼女は魂の気高さをたたえている。

(l’Obs誌 no. 3042 2023年1月26日)