横暴な母親

l’Obs誌セレクション

『L’ÂGE DE DÉTRUIRE』(*破壊の年齢)

Pauline Peyrade著 MINUIT出版 160p, 16ユーロ

 

★★★★ このような暴力を描いているのに、これほどの優美さ。こんな根深い苦悩を描くのにこれほどまでに繊細な表現。Pauline Payradeには4本の戯曲があるが、彼女が初めて発表したこの小説、これだけでも強い印象を与える。自らの惨状から、彼女は2つの場面からなる一本の散文悲劇を引き出した。『Age un』は1993年の話で、Elsaは7歳である。彼女は引っ越してきたばかりのアパルトマンで母親と暮らす。過保護で近親相姦で乱暴な毒親で、娘は、絶えることのない恫喝と私生活への脅しとしてベッドが2台重ねて置かれた寝室から、母親を「叩き出したい、蹴り出してやりたい」と思っている。ひっきりなく娘に愛していますと言わせる母親である。打ちのめされてみたり異常に興奮したり、うちしおれたり横暴であったりする母親は、殴りながら同時に愛撫したり、笑い転げたり泣きじゃくったり、壁を叩いたり、そして彼女の苦悩は、昼夜を問わず吸っているタバコの煙とともに消えていく。この母親は「自分の人生に決して見積もりを出したことがない」。クリスマスの夜に彼女の実母を訪問するおぞましい場面で、彼女が虐待を受けていたこと(彼女には左目の縁に小さな傷がある)、そして彼女自身がエルザと同じ年齢の時に受けていたことを、彼女なりさらに陰湿に再現していることが分かる。謎の老女から祖母に感謝の意図で贈られたエメラルド、ルビー、サファイアの3つの金の指輪、そんな形で受け継がれていく遺産、地獄のようなこの家系が所有する唯一の家宝だったのである。そしてさらに約20年後の『Age deux』、エルサは28平米のワンルームに1人で暮らしていて、彼女はやっと自分の寝室を手に入れ、そこで彼女は「他者の世界の果て」にへばりついている。彼女はSNSで退屈をまぎらわせたり、「SEXってどうやるんだっけフォーラム」に潜入してみたり、隣室のカップルの出す声を壁越しに聞く悦楽を見つけたりしている。ときおり母親が会いに来て、彼女は「墓穴の底に埋もれていた千年前の秘密」を楽しむようにキスをする。同時に自分がやられた暴力を彼女にやり返してやりたいという抗いがたい衝動など、これではまるで母親にそっくりで、呪いは母から娘へと延々と続いていくんだというパニックになりそうな恐怖も感じながら。途切れることのない緊張感のなかで、一人称で語られていくこの堂々たる処女作は、絶え間なく撃ち付けてくる告白であるが、魅惑的に優美な文体の背景で、語りすぎないよう、あらゆる心理学に警戒しつつ覚られたりしないよう、ディテールとなる日々の暮らしの光景や出来事の細心な記載にこだわる。エルザにとって「l’âge de comprendre」(*理解の年齢)である27歳は、ヴァージニア・ウルフによれば「l’age de détruire」(『*破壊の年齢 』)であった。37歳のPauline Peyradeにとって、それは今や創設の年齢(*)である。

これは傑作である。

(*comprendre-construire-détruire )

(l’Obs誌 no. 3044 2023年2月9日)