銃を憎むオースター

l’Obs誌セレクション

『PAYS DE SANG』 (*血の国家)

ポール・オースター著 英語原著からAnne-Laure Tissut 訳

ACTES SUD出版  208 P,  26ユーロ

 

★★★☆「アメリカ合衆国を西側世界で最も暴力的な国家にしてしまったのは誰なのか」、『ムーンパレス』の作者は、とても私的な、論文やパンフレットでもなく一本のエッセイの中で自らに問う。データ(アメリカ人は3億9300万丁、住民あたりおよそ1丁以上の火器を所有している)がめまいを引き起こすとすれば、それは統計的アプローチに対してではなく、むしろこのニューヨークの作家が試みる歴史的で倫理的な深い考察に対してである。彼の祖父は、36歳の時に妻によって撃ち倒されていて、彼女は別の女のために家を出たとして祖父を非難していた。Austerは1970年にバトンルージュの出身で、彼と同様にエッソのタンカーの水夫だった1人の赤毛の男と交友を持った。Lamarは彼に、土曜の夜の自分の好きな暇つぶしは、橋の上に立ってクルマや通行人にカービン銃を浴びせることだと言っていた。「いま彼が言ったばかりのことを私が理解しようとしている間、彼はその光景を思い出しながらニヤニヤしていた。そして私に言った、「車の上にぶっ放すとか、おまえ俺を馬鹿にしてるだろうって?いやそんなんじゃないぞ。」と彼は答えた。それは彼が実行してたことで、私が運転手や通行人や燃料タンクやタイヤを狙ったのかと尋ねると、彼はあいまいに、一度にそういうもの全部のあらゆる方向にぶっ放したのだと言った。」銃撃音、血まみれの死体、暴力に対する憎悪を表現する言葉をどうやって見いだしていくのか。ポール・オースターは、それをとてもゆっくりと、例えば、2017年11月5日にサザーランド・スプリングスの第一バプテスト教会で起こり、死者26名、負傷者25名を出した大量殺人を物語ることで見いだす(Bibliobsに彼の物語あり)。このテキサスの小さな共同体を惨殺しようとした「異常者」の大脳に入り込む。彼は昼寝から目覚め、急いで自分の武器庫に1丁の銃を探しに行き、教会に向かって走り出すであろう。この殺人者は、彼によってそこで首尾よく無力化される。このエッセーは、最後はトランプの大統領統治や国会襲撃についての省察となるのだが、しかし、若きアーティスト スペンサー・オストランダーが撮影したかつて大量殺人が起こった場所の写真も雄弁である。それは教会、スーパーマーケット、学校である。誰もいない空間で、現在はその大部分が閉鎖されており、こうした空間がアメリカ政府によれば領土内にたくさんあるとされている。

『Pays de sang』は卓越した作品である。恐ろしい作品であり、人間を根底から非難し、有益に叱責するものである。

(l’Obs誌 no. 3045 2023 年2月16日)