戦時下のクルコフ

『JOURNAL D’UNE INVASION』

ANDREÏ KOURKOV著 英語原著からJOHANN BIHR訳 

NOIR SUR BLANC出版 260 P, 23ユーロ

 

l’Obs誌セレクション

チェチェン共和国の厄介な首長Ramzan Kadyrovが、グロズニー総合病院の落成式で歯科医の勲章を得ていることをご存じだろうか。また今やロシアでは、充填用とされた鉛がなければ彼が自ら歯科診療を行うことがほぼできないことは?ウクライナ人たちは、スイスで買い物をしているためもあって、勝利は鉄の如く手堅いと信じるよりもさらに嬉しそうな笑顔を見せることができるのに。太古の昔からロシアとウクライナで争われているボルシチの秘密のレシピというのはご存じだろうか。あるロシア人シャーマンが、今ではノヴォシビルスクの精神病院に入っていて、プーチン、この「生まれつき忌み嫌われたデーモン」(demon exècré par la Nature)に歯向かおうとしたことを想像できるだろうか。Andreï Kourkovがこうしたあれやこれやの質問にも答えており、まさに彼が自らの祖国ウクライナに最も精通した人物であることが分かる。「2022年2月24日、私はほとんど何も書かなかった。キエフに襲いかかるロシアのミサイルの爆音で目覚め、自分のアパートの窓の前で1時間近く立ちすくして人が誰もいない街路をじっと見ていた。この戦争が始まったことは分かっていたが、それでもまだこの新たな現実を受け入れることができていなかった。」『Pingouin』(*邦題『ペンギンの憂鬱』)や2022年のメディシス外国文学賞受賞作『Abeilles grises』の作者が、この恐ろしい戦争が始まった時点から続けているこの日記は、このように始まる。アンドレイのカルパティア山脈への避難、終わりが見えない交通渋滞、無理解や恐怖は、このようにして始まった。「国のいたるところからやってきた車の海が、西側に続く道路に狭い漏斗状に流れ込む。誰もが、自分の家族を戦争の恐怖から守るために避難しようとしていた。」その1年後にクルコフは自宅に戻る。彼は見て、彼は書いた。彼はこの「活気にあふれる喧騒の場」を誰よりも描きとる。そこは、誰もが自分なりに推し量りながら貢献しようとしている、ウクライナの首都になっていた。一つの無益な戦争の、明晰で、しばしば予想外で、ときには滑稽な、とても印象的な一枚の絵画のようである。それは、一人の引き裂かれた偉大な作家の悲劇的な自画像でもある。なぜなら、クルコフの作家としてのキャリアは、ソヴィエトのMandelstamからPilniakやGoumilevを経てPlatonovにいたる偉大な作家たちを読むことから恩恵を受けており、彼らを読み続けているとも言っているのだが、心の中には同郷の人たちと共通する新たな感情が育っていることも感じるからである。それは、脅迫的に生じてしまうロシアへの憎しみである。(*la haine obsédante de la Russie)

(l’Obs誌 no.3050 2023年3月23日)