Netflixっぽいムラカミ

L’Obsセレクション
Netflixっぽいムラカミ


騎士団長殺し
ムラカミ・アルキ著 仏訳エレーヌ・モリタ 2018年10月18日Belfond出版 23.9ユーロ2巻組 456頁

それは一見すると、2巻組のまるで仮綴じ本のようで、その装丁にはニツポンで最も有名な作家の名前が書かれている。しかし、最初の数ページを過ぎれば、もう疑う余地はない。それはまさに小説の章ではなく、連続もののドラマのエピソードなのだ。仏訳版第1巻の319ページにある(?)ように、一枚の広告の切り抜きがあり、それは「あなたを待っていたわと、ドンナ・アンナは僕に言った」というフレーズで終わっている。ムラカミはさほどうんざりもせず、次の章でこれを取り上げる。「あなたを待っていたわと、ドンナ・アンナは僕に言った。」それならばもう少し簡潔に言おう。我々はゆっくりとその本質に近づくのだ。その数々の作品が世界的な規模でヒットしている作家、ムラカミは、魔術的リアリズムの作品を出版して人気となり、そこでは西洋風のナラティヴの効果とニツポン風の寡黙な自己表現が巧みに混在している。ムラカミの国では、人々は決して心中をあまり打ち明けないし、打ち明けたとしてもしぶしぶと言葉少なである。彼はあちらこちらでヨーロッパのクラシック音楽アメリカのジャズに触れているほど、その卓越した専門家でもあるのだが、(指揮者オザワ・セイジとの会話が『音楽について』というタイトルで出版されて書店にも並んでいますので、読んでみて下さい)、結局のところムラカミは、その描写する人物たちのスタイル、リズム、色彩によって、次第に和のものを明らかにしていくのだ。

単純で、その上ぱっとしない。さらには煮えきらない。さらには面白みがない。単純でスローペースで地味な語り、しかしそれは、日常的な基準の尺度では判断することのできないこの作品の美を作り出すものとはまさに違うのではないか。それは2巻組の、その妻ユズが他の男のもとへ去って行く才能ある肖像画家の物語である。彼は山の中のある偉大な日本人画家の家に隠棲する。自分自身とだけ向き合って?完全にはそうではない。隣の裕福でミステリアスな人物が、自分の肖像画を描いてほしいと彼に頼む。しかし、主人公がそのメンシキ氏の本質を理解しようとすると、異界のものがドアを叩く。その顔は、この家の前の住人が絵に描いていた人物(騎士団長)にそっくりな身長60センチメートルの小人である。これは誰なのか。そして、その夜主人公が鈴の音を聞いた庭に掘られた石室には、どんな秘密が潜んでいるのか。それが知りたければ、ムラカミ・チャンネルに接続するしかあらない。
(L’Obs誌 no. 2815 2018年10月18日)