ぜんぜん知らない人のためのピケティ

彼は何をしたか
この経済学者は、20カ国あまりの先進国の18世紀から現在に至るまでの税務データを集成した。そこから富の分配(所得の分布と資産の分布)に関する貴重な情報を引き出し、そこから確実な教訓を引き出した。

彼は何を明らかにしたか
1. 20世紀の初めにたとえ産業革命が労働者の給与を引き上げていたとしても、西洋諸国は不平等を助長するものであった。なぜなら資産は特定の一族によって占有されるだけだったからである。例えばヨーロッパでは、最も富める10%が利益の45%を巧妙な手段で集め、90%を世襲遺産として占有した。

2. 世界大戦と大恐慌は較差を著しく縮小し、金利生活者は自分の財産が消滅するのを見た。1950年代のアメリカでは、最も富める10%の人々が利益の35%を徴収したが、1910年から1920年にかけてはこれは4%であった。

3. 「栄光の30年間」においては、較差は比較的低い水準のままであった。尋常でない経済成長と競争力をもった税制・社会制度の施行が、世襲資産を形成できる中間層の出現を可能にした。
註:「21世紀の資本論」は19世紀と同様に較差を助長する社会に向かって、我々はどのように歩むかについて語っている。

4. 1980年代以来、較差は急激に増大している。アメリカでは、高所得経営者のボーナスは跳ね上がったが、著明な高収入と遺産相続に対する課税はかなり減額されている。結果 : 2000年代から、最も富める10%は新たに45%の利益を占有している。不動産所有者は過去何世紀にもわたる地主に取って代わり、個人の優れた特質ではなく遺産相続が再び機能し始めた。これはヨーロッパと日本で顕著である。

5. 経済成長が鈍ったため、資産からの収益 ー利率、配当金、賃貸収入、増価額収入などー が労働収入を上回っている。相続資産は特にヨーロッパに集結しており、労働収入は特にアメリカにて集結している(?)。そして大資産は、小資産よりずっと早く増大していく。つまり、国家は負債を負っているが、個人資産は公的負債よりさらに早く増大してしまった。

彼は何を提言しているか
1. アメリカで1930年から1980年にかけて行われていたように、40万ユーロを超える年収に対しておよそ80%というかなりの税率の累進課税を制定する。

2. 大資産に対しては、可能であればグローバル基準さもなければ大陸基準として、累進課税を制定する。資産には100万ユーロを超えて1%、500万ユーロを超えれば2%の課税など。

3. ヨーロッパは緊縮経済政策をやめ、経済成長の水準を上げるためには教育に資金注入を行う。
(L'OBS誌 2014年11月20日)