鬱憤が爆発するリスク

ル・モンド 社説 : この4月23日に行われた大統領選第一回投票が引き起こした政治情勢の大変動には、相反する二つの様相の特徴が組み合わされている。つまり予測可能でありかつ確実で、待望されながら予想外であるという特徴である。それは、この選挙期間中にずっとぬかりなかった調査機関が、数週間前から第二回投票の趨勢を報道していたために、予測可能であったのだ。

エマヌエル・マクロンの場合には、今回の展望は最も新しいものであり、それはこの期間中の数多のどんでん返しで大きくなったのだが、この候補はその才能でこの期間をうまく利用した。マリーヌ・ル・ペンの場合には、事態はもっとずっと以前からはっきりしている。フランスの政界は2年以上前から、国民前線の総裁がずっと欲しがっていた二つの枠の一つを確保し、かつ他の候補者たちは次席を狙って殴り合わなければならないという確信を中心として構成されていた。

そうなったのだ、予測どおりに、国民前線の候補の選挙運動の出来が悪く、2012年以来のさまざまな選挙と比べて得票スコアは後退していたにも関わらず。しかし何よりも、この結果が公然となることで、国家が負わされた傷の深さを相対化してはならない。国民前線が、大統領選挙の投票で20%の得票数を超えるなぞ、未曾有なのである。今回ル・ペンは、有権者760万人という党の得票数の記録を達成したわけで、2002年の大統領選の第一回投票における父親の得票数は280万人だったのだ。反世間的でアコギな親族集団に操られた、国家主義で外人嫌いの政党が、15年間に2回も、私たちの政治システムの重大な投票日に参加する資格を得たのだ。


毅然として国民前線を拒絶すること
こうした状況の再現は、私たちの民主主義の状況に対する注意を喚起し、かつ2002年の時のように毅然と拒絶していなければならない。本紙にとっては、このリアクションはいささかの曖昧さも許さないであろう。我々は、投票箱を前にして、国民前線は私たちのいかなる価値観とも相容れない、私たちの歴史の歩みやアイデンテティとも相容れないということを繰り返して言ってきた。それゆえ我々がマリーヌ・ル・ペンの敗北を願い、そのためにエマヌエル・マクロンに有利となるよう投票することを呼びかけるのは当然である。

しかし、私たちの国の未来にとって、最悪であり、最も危険であり、最も無責任なことは、今回の予想されることは確実で、En marche !の候補者の勝利にはもう疑う余地がないのだ、と考えることである。この予想の危うさを証明するには、ある比較をすれば十分に違いない。エマヌエル・マクロンは、62%の有権者の支持とともに今回の選挙戦の第二回投票に臨むのだが(Ipsos Sopra-Steria社調べ)、ジャック・シラクは投票数の82.2%でその第二回投票を終えているのである。15年間で20ポイントが霧のように消えている。2002年に行われた意思表明の呼びかけが蒸散し、国民投票に対向する「front républicain」の概念も消えていったように。

システムを破壊する者たちが目の当たりにしなければならないのは、脅威である。彼らには、一切の安定がない環境の中で生きてもらわねばならない。今回のエマヌエル・マクロンの素早い台頭の風は、主要なフランス政治の形成にあたって、数々の騒動を引き起こした。政権担当与党と対立政党の2党が、初めて第2回投票にどちらも参加しない、これはかつて右翼には決してなかったことだ。社会党は、半世紀以上前のインターナシオナル・フランス支部の最も困難な時期に戻されるようなスコアまで落ちた。右翼は、倫理的に信用を失った候補者は政治的に参加資格が得られないという結論を敢えて出さなかったがために、この選挙戦で非難の対象となった大統領フランソワ・オランドの前大臣で、もう一人の引き立て役フランソワ・バイルと組んだヴァルスから、ひどい目にあってよりいっそう辛い屈辱を受けた。


鬱憤を乗り越える
どうしてここまで落胆することになったのかいえば、たくさんの怨嗟や困窮が、避けがたい宿命として大量に噴出したからだ。ブノワ・アモンは、マクロンに有利となるような立派な呼びかけをするために、これらをうまく押し込めることができた。しかし右翼では、辛抱するには事態はあまり容易ではなかったようだ。多くの指導者や論説委員は、いらぬ明確な指示を与えずに済むよう、この予想結果は確実だと信じるふりをする。多くの保守主義有権者は、Sens communの活動家たちに支持されたフランソワ・フィヨン一人に熱くされてしまって、疑うまでもなくその鬱憤を乗り越えることが容易にできない。彼はすり抜けて前進するにあたって、メディアと司法を非難している過激主義の糸を、陰謀論も含めて操ることを恥じなかった。

「不服従」の指導者、ジャン=リュック・メランションがとても良好に票を得る形となった社会的抗議の大きさについても、同様にエマヌエル・マクロンは考慮に入れなければならないだろう。彼は左翼のあらゆる伝統と関係を断ち、投票日の夕方には、国民前線の対立候補マクロンへの投票を呼びかけることを拒否した。無視しえない相当数の彼の有権者が、同じ姿勢を取りたくなるのは間違いない。マクロン候補が彼らに意見を替えるよう説得するにあたっては、何をおいてもイラリー・クリントンと同じ誤ちを犯してはならないだろう。バーニー・サンダース有権者たちは、長い間抵抗して彼女に反抗したが、そこから彼女は何らの結論も引き出さなかった。念を押すが、クリントン候補は、今回のアメリカの投票の2週間では、ドナルド・トランプに対して疑いなく勝利者とみなされていたのだ。

有権者が大量に棄権するリスク、まさに5月8日(月)の連休の中日となる日曜が投票日であるというリスクは、やはり無視できるものでは全くないのだ。ズボラをしかねないこういう有権者全員に、エマヌエル・マクロンが、自分はフランスの政治システムが受けた打撃をきちんと認識していると明らかに示すには、あと15日間もないのである。
(Le Monde紙 2017年 4月25日)