ノーベル文学賞はアブデュラザク・グルナと彼の「植民地主義の影響への共感的かつ妥協のない」アプローチに与えられた

ノーベル文学賞はアブデュラザク・グルナと彼の「植民地主義の影響への共感的かつ妥協のない」アプローチに与えられた


10月7日にノーベル賞委員会によって、1948年にザンジバル島で生まれ、フランスではあまり翻訳されてないタンザニアの英語話者の作家が抜擢された。これにともなって、アフリカ大陸でこの賞を受ける作家としては彼が5人目となる。

 


今年は大陸としてはアフリカが本命とみなされていたならば、第114代ノーベル文学賞には、下馬評ではむしろケニアの作家グギ・ワ・ジオンゴ(Ngugi wa Thiong’o)の受賞が期待されていただろう。10月7日にそれを最終的に獲得したのは、タンザニア出身の著作家で大学教員のアブデュラザク・グルナで、ノーベル・アカデミーは彼の作品を介して、「文化と大陸との間で引き裂かれた難民たちの運命と、植民地主義の影響に対する共感的かつ妥協のない」アプローチを高く評価した。アブデュラザク・グルナは、同様に2020年に受賞したアメリカの女流詩人ルイーズ・グリュックに続いた。彼はアフリカ大陸でこの栄誉ある賞を受ける5人目の作家で、2003年の南アフリカのJ.M. Coetzee以来である。


1948年にザンジバル島で生まれたアブデュラザク・グルナは、英語で著作し、1960年代の終わりに避難したイギリスで暮らしている。イギリスついでナイジェリアで教育を受け、彼はカンタベリー市のケント大学の教員となる。そこで彼は1982年に学位を受ける。イギリス文学と、アフリカ、カリブ人とインド亜大陸に関連したポストコロニアル研究を専攻した彼は、英語による10本の小説、その最新作は2020年の『Afterlives』、さらにはV.S. NaipaulやSalman Rushdieといった旧大英帝国出身の作家たちに関する大量の学術論文を書いている。


流浪譚『Paradis』

フランスでは、2006年にGalande社より2006年に『Près de la mer』、そして2009年に『Adieu Zanzibar』が出版されている。しかし読者の皆さまがまず読むならば、四半世紀前の『Paradis』(1995年Danoel 社、Serpent à plume出版の『Motifs』叢書の加筆修正)からであろう。


この辛い流浪譚において、アブデュラザク・グルナは、波乱に満ちたタンガニーカ地方の歴史を見直す。ここは旧ドイツ領東アフリカで、国連の委任統治となり(*)、イギリスに占領され、ついでザンジバルと併合してタンザニアとなった。とりわけ彼は、過酷な歴史の中で最も弱い個人たちの運命に興味を抱いた。


若いユサフは父親に借金のカタとして売られ、ついで伯父によって奴隷とされ、そこから命がけで隊商ルートに出された。彼のたどる道のりによってこの作家は、権力者たちの気まぐれな利害、不安定な政治体制や時代の混乱によって絶えず脅かされるアフリカの若者を詳細に描く。受け入れ難い諦念と強烈な暴動の願望との間で激しくもがくあらゆる世代。


幻を見るような彼の皮肉的な『Paradis』は、古典的な奴隷制から、あらゆる形態の濫用や依存や消滅に至るまでの、人類によって考案された数多の様式の隷属を吟味する。そこには、今日の主人たちを明日の奴隷にするものも含まれている。

(Le Mondeサイト 2021年10月7日)           (*順番ママ)